10 / 10

第10話

 外は、夕暮れになっていた。   「寒くない?」  クロスは、何時もの様に首を傾げてにっこりと笑った。 「あ…」  私は、その顔に見惚れていたが、我に返った。 「あ、の…指輪、ありがとう」  私のことを見つめていたクロスは、うん、と頷いた。 「本当は、もっと本格的な指輪がよかったんだけどね」 「えっ、私、これでもいいのに!」  驚いて私は大きな声を出していた。  クロスは、立ち止まって、私を見た。  いつの間にか、クロスの瞳は真剣なものに変わっていた。 「クロス…?」 「そういうわけにもいかないよ…、だって、僕は、君の大切なものを…」  私は、思い出した。  花嫁の契約。 「クロス…、花嫁の、契約って…」  クロスは、握ったその手に力を込めたようだった。  そして、空を見上げた。 「…?」 「今晩しか、チャンスはないんだ」  私も、クロスの見上げた空を見る。黒い空には、月がなかった。  クロスは、私の手を引き、歩き出した。 「クロス…?どこに、いくの」  私は、その横顔を見つめ、訊いた。クロスは、ちらりとこちらを見て、前を向いてしまった。  歩幅も、いつも私に合わせてくれていたんだと、その時やっと理解した。  私は半ば走るように、クロスに従いて行った。  クロスは路地を抜け、行き交う人をすり抜けると、ビルの合間を通った。  すると突然、闇にぽっかりと口を開けたような広場に出た。
スキ!
スキ!
スキ!
スキ!
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!

この小説を読んだ人におすすめの作品

様々な恋のカタチ。カクテルがなぐさめ、はげまし、ときには突き落とす。カクテルな恋、あなたもいかが?
1
1
連載中/13話/37,370文字/20
2018年4月29日
お前は黙って俺に愛されてろ
連載中/19話/15,071文字/0
2018年4月11日
王となる人の妻として育てられた。けれど心は王弟に向いていて
1
完結済/99話/101,312文字/25
2018年3月31日
きっかけはよく似た指輪と、罪の匂い。
連載中/5話/4,279文字/0
2018年1月14日
もう24だし、未来なんて真っ暗
連載中/2話/4,483文字/0
2018年3月6日
甥のための結婚に応じた未亡人が片親違いの弟と4つ下の義甥に言い寄られる話。
連載中/6話/49,633文字
4月5日