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第10話

 外は、夕暮れになっていた。   「寒くない?」  クロスは、何時もの様に首を傾げてにっこりと笑った。 「あ…」  私は、その顔に見惚れていたが、我に返った。 「あ、の…指輪、ありがとう」  私のことを見つめていたクロスは、うん、と頷いた。 「本当は、もっと本格的な指輪がよかったんだけどね」 「えっ、私、これでもいいのに!」  驚いて私は大きな声を出していた。  クロスは、立ち止まって、私を見た。  いつの間にか、クロスの瞳は真剣なものに変わっていた。 「クロス…?」 「そういうわけにもいかないよ…、だって、僕は、君の大切なものを…」  私は、思い出した。  花嫁の契約。 「クロス…、花嫁の、契約って…」  クロスは、握ったその手に力を込めたようだった。  そして、空を見上げた。 「…?」 「今晩しか、チャンスはないんだ」  私も、クロスの見上げた空を見る。黒い空には、月がなかった。  クロスは、私の手を引き、歩き出した。 「クロス…?どこに、いくの」  私は、その横顔を見つめ、訊いた。クロスは、ちらりとこちらを見て、前を向いてしまった。  歩幅も、いつも私に合わせてくれていたんだと、その時やっと理解した。  私は半ば走るように、クロスに従いて行った。  クロスは路地を抜け、行き交う人をすり抜けると、ビルの合間を通った。  すると突然、闇にぽっかりと口を開けたような広場に出た。
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