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第9話

 誕生日、その日は日曜で、私はクロスと出かけていた。  恋人になって、初めてのデートだった。  ランチを食べた後、公園の鳩に餌をやり、なんとなく入った店でアクセサリーを見ていた。 「指輪、買おうか」  クロスが、呟いた。 「えっ」  私は、試着していた指輪を取り落としそうになった。  店員の女性が、ニコニコと笑う。 「すみません、もう少し、小さなサイズの指輪はありますか」  この指に合いそうな、と、掴んだのは、私の左手の薬指だった。 「え…、えっ」  慌てる私の顔を、クロスはにこにこと笑って見ると、取った手をつないだ。 「少々お待ち下さい」  店員の女性は、奥に入り、いそいそと二つの指輪を持ってきた。 「同じデザインのものがありますから、彼氏さんもいかがですか」 「ありがとうございます」  そう言って、クロスは私の指にするりと指輪をはめた。 「ぴったりだ。よく、似合ってる」  翼のモチーフの指輪が、白く眩い光を放つ。真新しい銀の輝きが、そこにあった。  私は、クロスに用意された指輪を持つと、その長い薬指に同じ様にはめた。  クロスは、眩しそうに、嬉しそうに指輪を見つめ、頷いた。 「じゃあ、この二つをください」  クロスは、迷いもなく言った。 「えっ」  私はただ驚いて、その横顔を見た。クロスはにっこりと笑って、指輪をはめた左手を握っていた。 「あ、このままで大丈夫です」  包装するかどうか尋ねた店員に、クロスは頭を下げると、お金を渡し、会計を済ませた。  私は、ただただ口をパクパクさせて見ているだけだった。 「行こうか」  クロスは、私の左手を掴んだまま、歩き出した。
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