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第8話

「羽織…」 「クロス。私、決めた」  クロスが息を飲んだ。私は、その白い頬をそっと両手で包んだ。 「!」  ひんやりと冷えた頬が、ぴくりと震えた。  「私、あなたの花嫁になる」  はっきりと、私は宣言した。 「羽織…」  クロスは、困ったような、微笑むようなよくわからない顔をして、私の頬をその手で包んだ。  その指は震えていた。 「いいの?」 「うん」 「ありがとう」    クロスは、私を抱きしめた。そして、何時ものように優しくキスをした。  私はこの時、勘違いをしていた。  夜の世界には私達を祝福してくれる者ばかりだと、そう思っていた。  夜の世界を知らないように、私達を奪うものが、存在していたことを、私は知らなかった。
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