13 / 13

次兄・レオンハルト

「――おやおや。とても愛らしいお嬢さんではないか」 よく通る声がして、一同が振り返る。 リヒトの表情が一瞬にして変わったことに気が付いたらしいエリサは、首を傾げた。 「レオン……」 「こらこら。兄を呼び捨てにするなよ」 不機嫌極まりないリヒトとは正反対に、からからと上機嫌な様子で現れたこの男性は、リヒトの次兄である。 ちなみに『レオン』というのは愛称のようなもので、正式な名は『レオンハルト』だ。 ふと、その歩み寄ってきた足がエリサの前で止まる。 「なるほど……貴女がリューベルの。そして、ちゃっかり婚約者としてリヒトが連れ帰ってきちゃった、と」 興味津々といった様子でエリサを見つめるレオンハルトを制するように、リヒトは二人の間を割るようにして前へ出た。 「だから何だ、彼女にあまり近づくな」 「何それ。リヒトってば、独占欲丸出しで余裕ないな~」 「! んなっ……」 いつもなら言い返しているところだが、エリサの手前、リヒトはぐっと堪える。 「……はぁ。『兄上』。紹介いたします。私の婚約者のエリサです」 「あ……。は、初めまして」 突然の兄の登場に、エリサも緊張気味に挨拶を述べていたようだった。 レオンハルトは『うん、うん』と軽く頷いて見せると、エリサの手を取り跪いた。 「!?」 「レオ……、兄上っ」 「初めましてエリサ嬢、我がアズール王城へようこそ。僕は第二王子のレオンハルトだ。近い将来、君の義兄になるかもしれないのだから、今から『お義兄様』と呼んでくれて構わないよ」 そう言ってエリサの手の甲に軽くキスを落とすと、にこやかな表情を携えたまま立ち上がり、そっと手を放した。 「レオンっ」 「別に良いじゃないか、減るものでもないし」 ただの挨拶だよ。 弟の睨みを受けても飄々とした態度を崩さないレオンハルトは、もう一度エリサに向き直る。 「まさか、弟に先越されるなんてね。あんなに婚約者候補がいても全然興味なさそうだったリヒトが、初めて会ったその日にプロポーズとは!」 「……婚約者候補?」 「レオン! そろそろ口を閉じてくれ!」 「なんで隠すの? 知っておいたほうがいいと思うよ? だって、これから大変な思いをするのはエリサちゃんなんだから」 そう言って、レオンハルトはエリサにあることを告げる。 「エリサちゃん。僕たち三兄弟には世界各地に婚約者候補が複数いるんだ。だけど、リヒトはその候補者たちではなく、エリサちゃんを選んだ。……実はね。一ヶ月後に、その婚約者候補たちを招待して、パーティーが行われる予定がある」 「……えっ」 「つまり。エリサちゃんは、婚約者候補たちの前で『正式に』リヒトの婚約者として紹介されるってこと。そうだろ、リヒト?」 「……あぁ」 リヒトはバツが悪そうに頭を抱え、小さく頷いた。 「エリサちゃんは、今まで一般の家庭で育ったと聞いている。となれば、これまでに貴族としてのマナーやエチケット、所作を教えてもらったこともないだろう?」 「そ、そうですね……」 指摘され、エリサは不安げに返事をする。 「そうだよね。……リヒト、これは由々しき事態なんだ。幸い、僕はエリサちゃんが気に入った。是非とも義妹に迎えたいと思っているから、協力してあげるよ」 「き、気に入ったって……。レオン、それは」 「うん? 他意はないよ。正直な気持ちさ。……となれば、今日から早速始めよう――」
スキ!
スキ!
スキ!
スキ!
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!

この小説を読んだ人におすすめの作品

どんな薬も、恋の病を和らげてくれることはない
2
1
2
完結済/20話/54,522文字/32
2017年9月7日
シンデレラでは義母と義姉がいじめっ子。だけどこの物語でのいじめっ子は王子様なのです。
1
2
連載中/14話/29,679文字/25
2017年11月2日
美貌のエスコート、強さ鬼神級、されど変態度は魔神級!!!
完結済/10話/32,596文字/0
2017年9月20日
海で漁をしていたら、身なりのいい男が崖に立っていた。死にたがっているように見えて、私は――
完結済/84話/78,321文字/13
2017年12月23日
「異世界で四神と結婚しろと言われました」の設定や番外編など。
11
3
2
3
連載中/4話/7,167文字/473
2018年8月19日
「あなたのしたことは、れっきとした触法行為です!」……白雪姫は、ツワモノだった。
2
完結済/1話/9,991文字/99
2017年11月5日