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第41話

「おめでとう!」  結婚式を挙げたばかりの悠木夫妻が教会から姿を現し、階段を下りてくる。彼らの前途を祝して、列席者たちが放つ花びらと紙吹雪が宙に舞っていた。それを少し離れたところから真はマリィとともに眺めている。 「そういえば、美咲さんとどんな関わりにしたんだ?」  思い出したように真が問うと、マリィは新郎新婦の姿を見つめながら声を潜めて返事した。 「彼女と彼女のお友達が通っているバーの常連客よ。そこのマスターね、人間界に来たときからお世話になってる方なのよ。だからそれを利用させていただいたの」 「お世話に、って、どういうお世話だよ」 「お酒とか、おつまみとか? シャルムであなたに出していたお酒は全部、そのお店から分けて頂いてたの、実は」 「はあ?」  真は素っ頓狂な声を出した。それというのも、自分が知らない人間との繋がりをマリィがあっさりと話したからである。 「店には結界が張っているし、お前達だってなるべく人目につかないようにしていたんだよな?」 「ええ、そうよ。でもあそこのお店は、その人が所有しているお店なんだもん。関わらざるを得ないでしょ?」 「つまり、お前達は他人が所有している店にいたってことか……」 「そうなるわね」  マリィがしれっとした顔で答えるものだから、真は呆れた顔をした。 「真、来てくれてありがとうな!」  マリィと話をしているうちに、悠木がやって来た。  白いワンピースを身につけた幸せそうな新婦と仲良く腕を組んで。 「ミサキさん、きれいよ。結婚おめでとう!」  以前から知り合いだったようにマリィが声を掛けると、悠木の妻は嬉しそうな顔をした。 「ありがとう、マリィさん。でも本当に驚いた。まさか槙野さんとマリィさんが恋人同士だったなんて……」  美咲からそう言われたあと、真とマリィは顔を合わせてほほ笑みあった。  結婚式が始まる前、真はマリィを連れて悠木と悠木の妻にそれぞれ会いに行った。  悠木にはあらかじめ用意していたマリィの経歴を伝えたが、彼の妻にはそうではなかった。  マリィは美咲と会話を交わしながら、彼女の記憶に用意した経歴などを埋め込んだ。  マリィはロンドン出身であること。一年前に日本にやって来たことなどなど。  そして数分後には、美咲の知り合いというポジションを無事に作ることができたのだった。 「そのうち、お二人のもとにかわいいベビーがやってくるわ」 「えっ?」  他の招待客に挨拶に向かった二人の背中を見ながら、マリィがぼそりと呟いた。 「私が加護を与えなくても、来ることになってたみたい。でも、ちょっとだけ早く来てもらうことにしたの。私たちの子供と同級生になってほしくて」  隣にいるマリィに目をやると、彼女と目が合った。  マリィはにっこり笑って、まだひらべったいお腹を優しく撫でる。 「そういや、まだ籍を入れてなかったな。人間同士の結婚は届け出が必要なんだよ。そうだ。これからその用紙をもらいに行こう。保証人はさっき教えてくれたマスターと悠木さんたち。あと俺の友人に頼めばどうにかなる」  そう言って真が小さな手を握りしめると、マリィは嬉しそうな顔で頷いたのだった。
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