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第27話

 マリィが黙り込んでから、徐々に甘い匂いが薄れていった。それに気がつきマリィへ目をやると、寂しげな表情を浮かべ指を弄っている。なぜ、マリィがそのような表情をしているのか理由が分からず、真は今までのことを振り返った。  抑えつけられない程の衝動は、マリィにも伝わっていたらしい。  それが自分自身の糧になるのだとマリィから言われたあと、二人の間に見えない壁が出来たような気がした。  もともとマリィと自分自身は異なる存在だ。マリィが自分を求めるのは、ただ単に魔力を補う為だった。だから、マリィとの「違い」を思い知ったからといって、今更寂しさを感じる理由にはなり得ないはずだった。  だが、目の前で寂しげにしているマリィを見ていると、無性につらくなる。できることなら、抱きしめてやりたいけれど、そうしたからといってこの寂しさは埋められない気がした。そのとき、真はあることを思い出した。  それは、マリィを初めて「抱いた」ときのことだ。セーレから聞かされた話を思い出してしまい、それまでの劣情が引き潮のように薄れていった。あのときと、いま抱いている感情は根っこの部分で繋がっているような気がする。真がマリィを見ながら考え込んでいると、突然彼女が太い指をぱくりと口に含んだ。指から温かく柔らかな感触が伝ってくる。マリィから上目を向けられ、真はどきりとする。まるでいたずらっ子のような仕草がかわいらしい。 「マ、マリィ?」  恐る恐る名を呼んでみるが、マリィは無視して真の指を舐めていた。赤い舌を尖らせて、皮膚の表面をなぞり上げる様は、まるで口淫のようだった。肌から伝う濡れた舌の感触と、ぴちゃぴちゃと立ち上がる音のせいで、萎れた肉竿が勢いを取り戻してくる。内側から張り詰める感触とともに、根元に疼きが溜まっていった。  疼きはやがて熱を発し、体の芯へと吸い込まれていった。全身が火照りだし、息苦しくなってくる。  それとともに、マリィを見つめる瞳が熱を帯びてきた。刀が収まるべき鞘を求めるように、マリィとひとつになりたい欲求が膨れ上がってくる。それは肉欲と似ているが、先ほど感じたような激しい衝動とは違ったものだった。静かに昂ぶる劣情を感じながら指を舐めしゃぶる様子を見ていると、マリィは舐めていた手を自分の頬に押しつけた。しっとりとした肌の感触が手のひらから伝わってくる。マリィは嬉しそうに、しかし悲しげな表情を浮かべていた。よく見ると、目にうっすら涙が溜まっている。それを見たとき、真はあることに気がついた。  マリィたちは、相手の心を見ることができる。  ということは、今の今まで考えていたこと全て、マリィに筒抜けだったのだ。 「……だから、勝手に見るなって言っただろ……」  真は、胸のうちを見透かされたような気がして、それを誤魔化そうとふて腐れたフリをした。  今は何も考えずマリィを抱きたかった。そうすれば、やるせない感情が消えてくれるような気がしたからだ。彼女を引き寄せ抱き締めた後、真は徐々に濃さを増していく甘い匂いを胸いっぱい吸い込んだ。 「前にも言ったと思うけど、流れ込んでくるんだから仕方がないじゃない。私だって同じよ、ずっとこうしていられたらいいのにって思ってる」  マリィが体をすり寄せてきた。それがかわいらしく思えて真は相互を崩す。いずれマリィは自分の前からいなくなる存在だ。それに自分以外の伴侶と生きていくのだろう。人間である自分地下の世界に生きるマリィ、二人の人生が交差したのは奇跡のようなものだ。そう思ったら、今このときが無性に愛おしく思えた。真はマリィをかき抱く。腕の中にすっぽり収まっている美しいウサギが顔をあげた。幾分開いている肉感的な唇に吸い寄せられるように、真は唇を押しつける。  わずかに開いていた合間から舌を差し込むと、すぐに絡め取られてしまった。柔らかくて熱い舌が寄りそうに絡まりついてくる。はじめのあたりはかなり強引に舌を絡められたなと思い返し、真は唇を重ねながら笑みを零した。  唇にマリィの息が掛かる。重ねた唇の隙間から漏れる息が、少しずつ浅くなってきた。それとともに、甘やかな匂いが濃さを増し、同時に体も熱くなってきた。真だってそうだ。体の芯が火照り始め、肌という肌からじっとりと汗が滲み出している。力を失っていた逸物が、それを取り戻し硬くなってきた。  真はゆっくりと体を押しつける。するとマリィのなよやかな腕が、首に回された。手触りの良いラビットファーの感触を楽しみながら、体のラインを撫でてやると、マリィが甘い声を漏らした。 「ん……んっ」  手を動かす度に、マリィは声を漏らしながら体を震わせた。くびれた腰から背中にてを回し、あらわになっている背中を撫でてやる。すると、びくびくと痙攣しながら背をのけぞらした。 「かわいい……」  真は小さな耳に唇を寄せた。掛かる息にさえ、マリィは体を震わせる。彼女の顔を見ると、黒い瞳をまっすぐ向けられていた。頬が赤い。ぽってりとした唇はすっかり濡れていて、その合間から甘い吐息が漏れている。そんな姿を見てしまったら、ふつふつとこみ上げる劣情に火がつくのも時間の問題だ。真は、再びキスしながら、マリィをベッドにゆっくりと押し倒した。
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