26 / 41

第26話

 ――なんで、ここに……。  ベッドの上で、真は思った。いつもなら、あの部屋で全てを行うのに、なぜまた異空間へ連れてこられたのかが分からない。考え込んでいる真の目の前では、マリィが背を向けていそいそとコスチュームを着けている。  マリィが手に入れたコスチュームは、肩だしのレオタードタイプだった。だが、下半身をカバーする部分がない短いもので、下腹部分にかかっている裾にはガーターベルトが付いている。それにうさぎのコスチュームと言えば、黒いバニースーツが浮かぶものだが、彼女が着ているものはそれとは異なっていた。  白いラビットファーでできたそれは、コスチュームと呼んでいいものかためらわれるような品物だった。それを身につけ終わったあと、マリィはうさぎの長い耳がついたカチューシャを頭につけて、くるりと振り返った。 「ね。似合う?」  細い首に巻かれた赤い首輪についた鈴がリンと鳴る。ふわふわの白いウサギの毛に覆われたバスト部分を見ると、白い胸がしっかり盛り上がっていた。全体のサイズは問題ないようだが、バストサイズが合わなかったらしい。柔肉が収まり切れていないようだった。真がそこばかり見ているものだから、さすがに気がついたのだろう。マリィが胸元に目線を下げた。 「これね、面白いのよ」 「は?」  マリィは胸を覆っている部分をぺらりとめくって見せた。それまで押しつぶされてい乳房が、その柔らかな曲線を取り戻す。見せられたものへ目をやると、衣装の裏にはレザーが張られていた。よく見ると、細かな突起がびっしりついている。真はレザーには詳しくないから、それがなんの皮なのか分からなかった。 「触ってみて」  下ろしていた手を持ち上げられて、その皮部分に導かれた。密に生えそろった突起のせいで、指先に触れたところはザラザラとしている。その感触が伝った瞬間、頭の中にあらぬ妄想が浮かんだ。立ち上がった乳首にザラザラとした皮が触れたとき、マリィはどのような反応をするのだろうかと。それを思い浮かべたとたん、股間に血液が集まりだしてきて、じわじわと内側から膨らんでくる。すると、皮の感触を確かめていた手をそっと握られて、柔らかい乳房に持って行かれてしまった。  マリィの乳房はとても柔らかい。しっとりとした肌は、手に吸い付くようだった。  感触を確かめるように揉み始めると、甘やかな匂いがどんどん濃さを増していった。 「ん……」  鼻に掛かった甘い声。それに気がつきマリィを見ると、頬がほんのり赤くなっていた。わずかに開いている肉感的な唇からは、切なげな吐息が漏れている。それらに劣情を抱くなというほうが無理だ。目の前にいる淫らなウサギをどうにかしたくてたまらない。真はマリィの乳房を衝動的にぎゅっとわしづかんだ。 「あ……っ!」  マリィのきれいな顔が歪む。背をのけぞらせたせいで、形のよい胸が前に突き出された。思わず先端に目をやれば、わずかに立ち上がりかけている。それを目にしたとたん、勃起が一気に硬くなった。体の奥から発せられる熱のせいで、どんどん理性が溶けていく。雄としての本能にのみこまれそうになったそのとき。 「し……ん……」  か細い声が耳に入り、真は我に返った。マリィに目をやると、浅い息を吐きながら潤んだ瞳を向けている。  真は、それまで乳房を掴んでいた手を離した。 「す、すまん……」  マリィの乳房を見ると、鷲づかみにしていた部分がうっすら赤くなっている。  それに申し訳なさを感じながらも、ほの暗い愉悦を抱いている自分自身に驚きを隠せなかった。  ぼう然としながら、赤くなった部分を眺めていると、マリィの声が耳に入った。 「いいの」 「えっ?」 「今、何かを感じたでしょう? その衝動のままに私を抱いていいのよ、真」  マリィからほほ笑みを向けられてしまい、真は罪悪感から苦笑で返した。 「俺は……、荒々しく抱きたいわけじゃない……」  それなのに、あの衝動はなんだ。体の芯が急に熱を帯びてきて、内側から全て溶かされるような感覚は。突如として湧き上がった衝動を思い返そうとしたとき、下ろした手に何かが触れた。マリィの小さな手が、真の手にそっと触れる。 「さっきの衝動、私にも伝ってきたわ。マグマのように熱くて激しい衝動」 「驚いたよ。あんな感覚初めてだったから」 「でも、みんな持ってるものよ」  真の手をとったあと、指を弄りながらマリィが話す。それを眺めながら、真は今し方湧き上がった衝動を再び思い返した。それまで正常だった思考や理性がどろどろに溶けてしまい、それらに隠されていた本能がいきなり姿を現した。今まで数人の女たちを抱いてきたが、あのような激しい衝動を感じたことがない。それだけに、真は自分らしくない行動に動揺したのだ。 「そういったものを私たちは糧にしているの」  激しい衝動に飲み込まれそうになったときのことを振り返っていると、マリィが小声で呟いた。その言葉を聞いたとき、二人の間に目に見えない壁ができた気がしてたまらなかった。真は隣にいるマリィに目を向ける。彼女は弄っている手を見つめたまま、黙り込んでいた。
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!