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第25話

 部屋に連れてこられて、見せられたものに真は絶句する。  それというのは、かなり刺激的なアイテムが並んでいるからだ。  尻尾がついたプラスチック製のアナルプラグ。  艶を放つ赤い革の首輪には、細いチェーンがついている。  やや太めのスティックに不自然な間隔でついている二つの(かせ)。  それにシリコンでできたと思われる数珠つなぎのアイテム。  どのような使い方をするアイテムなのかはっきりとは分からない。  だが、どこからどうみても、SMで用いるそれだ。目を大きくさせたまま体を硬直させている真に、マリィは子供のようにはしゃいで見せている。 「でね、これはアナルに挿入するの。そうすればお尻から尻尾が生えているように見えるんだって」  マリィが手にしたのは、アナルプラグだった。まるで猫の尻尾のようなものがついている。真はマリィが撫でている猫の尻尾より、アナルに差し込むプラグが気になって仕方がない。プラグ部分は、男の親指より太く、一番長い人差し指よりと同じくらいの長さだった。それを見たとき、真は無意識のうちに自分自身の肛門をきゅっと締めてしまう。  次に見せられたのは、赤い首輪と鎖のリードだった。  その大きささえなかったら、ペット用の首輪に見えないことはない。 「そして、コレが首輪。尻尾を付けた人にコレを付けて、お散歩するらしいんだけど……」  マリィから目を向けられて、真はぎくりとした。だが、向けられた顔を見ると、不安げな表情を浮かべている。その表情の理由を考えてみるが、すぐには思い浮かばなかった。すると、目の前にいるマリィから唐突に尋ねられた。 「人間って、こういうものが好きなの?」 「はあ?」  いきなり突拍子のないことを尋ねられ、真はうろたえた。  マリィが言う「こういうもの」とはどのようなことを指すのだろうか。  尻尾付きのアナルプラグといい首輪といい、一般的なセックスでは必要としないものだ。だが、主従とかSM愛好家からすればごくごく普通に用いるだろう。だが、それをどういう風に説明したらいいのだろう。真はマリィが手にしているものを見つめながら考えていると、何を思ったのかマリィが首輪を付けた。いつの間にかそれまで着ていたワンピースが消えていて、金の装飾だけになっている。 「マ、マリィ?」  真がぎょっとなりながら名を呼ぶと、彼女は顔をきょとんとさせた。 「何してんだよ。いきなり……」 「首輪って首に付けるものでしょう?」 「そうだけど、なんでお前が着けるの?」 「だって、これ女性用だから……」  そういってマリィは首輪に付いていた小さな鈴を指で鳴らした。リンとかわいらしい音がする。  真の目の前でマリィはその鈴を指で鳴らして遊んでいた。だが、何かに気がついたようで、顔をはっとさせたマリィが椅子に置いていた鞄の中を漁り始めた。すっと伸びた白い背中と肉付きのよい臀部の境に、金の鎖が巻かれている。しばらくごそごそと何かを探していたが、ようやく目的のものを見つけたようで、それを手にしたマリィがくるりと振り返った。 「でね、さっき見せたのは猫。こっちはウサギなの」 「えっ?」 「この尻尾、かわいいでしょう?」  まん丸い尻尾を差し出され、真はうっと言葉を詰まらせた。 「どっちが好き?」 「はあ?」 「猫の尻尾とウサギの尻尾。真はどっちが好き?」  裸に赤い首輪を付けたマリィが、猫の長い尻尾と丸いウサギの尻尾を持って、真に問いかける。  二つの尻尾はどちらも白く、柔らかそうだった。長い尻尾もいいが、丸い尻尾も捨て難い。  選択を迫られてしまい、真は猫とウサギの尻尾を着けた裸のマリィの姿を想像し始めた。そのとき。 「そういえばウサギのコスチュームもあるの。かわいいのよ」 「こ、こす、ちゅーむ、だと?」  一瞬、過去の出来事が頭をよぎる。 「ええ。ウサギの革を使ったやつで、手触り抜群なの。実は、そのコスチュームがお店のディスプレイコーナーに飾られてて、それが気になって入ったのよ。そうしたら女性向けのお店だったらしくて、たくさんのコスチュームがいっぱい合ったわ。もちろんセックス・トイもね」  昔付き合っていたことがある彼女に、メイド服を着てほしいと一度だけ言ったことがある。  だが、それはどのようなものか興味が引かれたからであり、その格好が好きだということではなかった。  しかし、恋人は怪訝な顔を向けただけでなく、白い目を向けてきた。それ以来彼女はセックスを拒むようになり、そのまま恋人関係は消滅してしまった。  雑誌や動画に出てくるアイテムを見るたび興味を引かれたが、恋人となった女性たちは、そういったアイテムを受け付けないタイプばかりだった。  もちろん何も用いず肌と肌を重ねるセックスもいいが、たまにはそういったものを用いてみたい。恥ずかしがりながらも快楽に打ち震える恋人の姿を見たいと男なら誰しも思うはずだ。少なくとも、真はそう思っている。 「真?」  名前を呼ばれ、真は我に返る。目の前に立っているマリィを見ると、瞬きを繰り返していた。  チャームの甘い香りがわずかに揺れる。しかもその匂いの濃さが薄まっていた。 「こういうの、もしかして嫌、だった?」 「えっ?」 「お店の人から、相手が興味なさそうなら、しつこく言っちゃ駄目だって言われたの。人によっては好き嫌いあるからって」  しゅんとなったマリィの姿は、とても頼りない。嫌いではないが、マリィが余りにも積極的過ぎるからぼう然となっていたとは言いにくいものがある。それをどうやって言葉にしたらいいのだろう。真は頭の中で言葉を探した。 「き、嫌いじゃない」 「ほんと?」 「でも、好きなわけでもない。初めてだから……」 「初めて?」 「自ら進んでコスチュームを着たがる相手と、その……、したことがない、というか……」  真が言いづらそうに答えると、マリィの表情がみるみるうちに明るくなった。  同時に甘い香りが一気に濃さを増す。 「じゃあ、私が初めて?」 「う?」 「だって、そうでしょう? 今までしたことないことをこれからするんだもの」  マリィから嬉しそうな顔を向けられてしまい、真は頷くことしかできなかった。
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