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第20話

 真はマリィに覆いかぶさってキスしながら、豊かな乳房を揉んでいた。  マリィの乳房は硬かった。  柔らかそうに見えていたけれど、いざ揉んでみるとそうではなかった。  手のひらに吸い付くような肌は想像通りだったが、弾力というには硬すぎた。  真は、それまでマリィの体に触れたことがない。  そもそもセックスしている最中は、手の動きを完全に封じ込められているから触れない。  それ以外では、マリィは自分自身の体に指一本触れさせようとしないのだ。  だが、真はたった一度だけマリィの体に触れたことがある。  行為が終わったあとの一瞬の隙を突いて、彼女の乳首に触れたときだ。  そのときのマリィの姿が急に頭の中に浮かんできてしまい、真は唇を重ねながら笑みを漏らす。  すると、いきなり両頬に温かいものが触れた。それだけでなく、腰をしっかり挟まれてしまう。頬に触れたものはマリィの両手で、腰を挟んだのは彼女の脚だと気づいたとき、それまで重ねていた唇が離れていった。突然顔を離したマリィを見ると、すねたような表情を浮かべている。 「マリィ?」 「……あのときは驚いただけよ」 「えっ?」 「セーレ以外に触られたことがなかったから、びっくりしたのよ」  顔をそらしながら、むくれた子供のように話すマリィ。どうやらまた心を読まれてしまったらしい。勝手に人の心を読むなと咎めたいところだが、彼女は先ほど言っていた。勝手に流れてくるのだと。勝手に流れ込んだものなら仕方がない。そう諦めかけたとき、真はあることに気づく。  よく見ると、マリィの頬がほんのり赤くなっている。しかも赤毛の合間に見え隠れしている小さな耳まで赤かった。それを目にしたとき、悪戯心がむくむくと湧き上がってきて、真は無意識のうちに耳に唇を寄せていた。 「びっくりしただけか?」 「きゃっ!」  低い声で囁くように問いかけた瞬間、マリィは声を上げ体を竦ませた。小さな肩がふるふると小刻みに震えている。思いがけない反応を示すマリィを見て、真は調子づいてしまい更に悪戯を仕掛け始める。  真はマリィの耳に唇を押しつけながら、彼女の乳房に手を伸ばした。お椀型の乳房の輪郭に沿って優しくなで上げたあと、少しずつ指先を乳首に近づけさせる。そしてひときわ低い声で囁いた。 「マリィ、あのとき感じていたんじゃないのか?」 「えっ? あっ、やっ!」  問いかけたと同時に、ふっくら立ち上がりかけていた乳嘴(にゅうし)をきゅっとつまんだところ、マリィは声を上げながら背をしならせた。真は再び耳に唇を押しつける。 「質問に答えろ、マリィ」  わざと掠れた声で問いかけてみたが、マリィは肩を竦ませたまま返事をしようとしない。  真は返事を促す意味をこめて乳首を強めにつまむと、それはしっかり硬くなっていた。 「ああ……っ!」 「答えるまでこのままだぞ?」  真はすっかり硬くなった乳首を、コリコリと捩る。  すると、マリィの表情が切なげなものへと変わりだした。 「マリィ。教えてくれ、今どんな気持ちだ」 「あっ、あっ、あっ……」  指の動きに合わせて声を漏らすマリィを見れば、感じているようにしか見えなかった。それを分かっているのに、わざわざ言葉にさせようとしている自分が、我ながら意地悪いとは思う。  意地の悪い問いかけにマリィは答えようとしない。だから真の指は、赤く色づいた乳首を執拗に嬲ったままになっていた。ミルク色だった肌はうっすら赤くなっていた。それが何を表しているのか、真は既に気づいているが、素知らぬ顔で悪戯を繰り返す。  すると、突然マリィが身じろぎし始めた。ついに耐えきれなくなったのか、逃げようとして体を捩ろうとする。しかし、真が下半身で押さえ込んでいるため、それは失敗に終わってしまう。 「逃げようとしても無駄だ、諦めろ」  真はほくそ笑みながら、小さな耳をかぷりと噛んだ。  するとマリィが顔を真っ赤にして、声を詰まらせた。 「んっ!」  うっすら開いているまぶたから覗く黒い瞳が、心なしか潤んでいるように見えた。わずかに開いた唇から漏れる息づかいも、徐々に艶を増している。それに覆いかぶさっている肢体へ目をやれば、ピンク色に上気した肌はしっとりと汗ばんでいた。  同衾するとき、彼女は常に冷静だ。それは淫魔であるマリィからすれば、人間の食事と同じだからだ。  だが、今目の前にいる彼女からは、冷静さは感じない。むしろ肉欲に耽りつつあるようにしか思えなかった。  淫魔にとってセックスは食事だ。そんな彼らが肉欲に溺れることはまずないという。  しかし、ひとつだけ例外があるとセーレは話していた。 『淫魔にとってセックスは食事だが、伴侶とのセックスは別物なんだ。ちゃんと感じるし、ちゃんとイく。そこに伴侶たる理由があるんだ』  マリィの姿を見ているとき、以前セーレから聞かされた言葉が頭に浮かんだ。だが、真はその言葉をすぐに打ち消した。たとえ今目の前でマリィが肉欲に耽っていても、それは伴侶とセックスをしているからではないからだ。真はマリィの伴侶でないし、何より伴侶の条件に見合わない。伴侶とは魂同士が強く結びついてしまうほど、深く愛し合える相手を指すということだから。  しかも、その感情を二人が抱いていなければならないというし、そういう意味ではマリィの伴侶にはなり得ないと真は思った。今、マリィに対して抱いているのは、肉欲だけだ。先ほどマリィが見せた夢の中のように抱いてほしいと当人から言われたからその通りにしているだけだし、それ以外の理由などないはずだった。  それに何よりマリィだって、自分に対して抱いている感情は好意とは別物だ。  そう思い至ったとき、それまで興奮していたものが、引き潮のように醒めていった。
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