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第16話

 マリィにキスされていることに気づいたあと、体に異変が起きた。  急に体の芯が熱くなり、まるで全力疾走したかのように汗がどっと噴き出した。それだけでなく、高熱に浮かされたように頭の芯がぼうっとなってくる。正常だったはずの理性はもはや風前の灯火のようになっていて、そのかわり瞬く間に浮かんできた本能に真は支配されかけていた。  マリィの濡れた舌が絡まり、扱くような動きをし始める。押しつけられた唇は思いのほか柔らかかった。舌を伝い流れ込んだ唾液が甘いもののように感じ始め、真は朦朧となりながらも不審を抱いた。  その間、真の両膝の間にいたリーシャは、二人がキスしているところをじっと見つめていた。荒い息を吐きながら唇にむしゃぶりついている真と、息一つ乱すことなく受け止めているマリィの姿を。しばらくしたあと、急にリーシャが青い目を大きくさせた。そして、ベルトを外し始め、ズボンの前をくつろげる。すると、伸縮性のある生地に包まれた盛り上がりが現れた。リーシャは再び、しかし今度はマリィだけに目を向けた。  向けられた視線に気がついたのか、マリィはキスをしながら、リーシャへと目を向ける。うっすら開いたまぶたから見える瞳は黒だった。マリィがわずかに目を細めながら小さく頷くと、リーシャは生地を押し上げている怒張に指を伸ばした。  生身の男に一度も触れたことがない細い指が、慣れた手つきで盛り上がりの表面をさすり始める。そしてその指は男根の付け根に向かい、二本の指で根元を柔く挟む。強弱をつけて挟んだあと、柔い生地を押し上げている勃起に手を滑らせた。 「うぁ……っ!」  じんじんと疼きながら熱を発しているところを急に刺激され、真は体をびくっと震わせた。しかし、リーシャは特に気にもせず、焦らすようにゆっくり繰り返している。玉袋がせり上がる感覚が走り、そちらに意識が勝手に向かった瞬間、いつものようにマリィに跨がれていた。勃起を魅惑的な肉体に咥えこみながら見下ろしている。だが、いつもとは違っていた。  マリィはセックスしている間、いかなるときも冷静だ。体の自由を奪われた上に、限界まで射精を我慢させられている真を、観察するような目で見下ろしている。それなのに、目の前にいる彼女は、熱っぽい瞳を自分に向けていた。それだけでなく、どこか媚びるように体をくねらせている。跨がっている彼女が体をくねらせるたびに、熱い肉襞に包み込まれている男根から異なる刺激が伝ってきて、真は無意識のうちに体をこわばらせた。  細かな襞が蠢き、今にも弾けそうなほど張り詰めた肉茎に吸い付く。ぴとぴとと吸い付くさまは、小さな気泡を押しつけられたような感覚だった。その上彼女が体を揺らすたび、その気泡が男根をやわやわとすり上げるから、たまったものではない。  強烈な射精感に苛まれながらマリィの姿を見ると、白い肌が赤みを帯びていた。そのうえ、汗でうっすら濡れている。その姿は、とても淫らだった。潤んだ瞳を切なげに細め、マリィがか細い声を漏らす。 「真……」  マリィは、真の腹に手を突いて今にも崩れ落ちそうな体を支えている。両腕に挟まれたせいで盛り上がった乳房の先端が、赤みを帯びた上にしっかり立ち上がっていた。それを目にした瞬間、心臓を鷲づかみにされたような痛みが走り、真は顔を歪ませる。  わずかに腕を動かしてみると、いつもは全く動かないのにどういうわけか動いた。真は手をマリィのピンク色の乳首に伸ばす。軽くつまんでみると、しっかり硬かった。 「んっ!」  驚いたような声がしてそちらを見ると、マリィはなまめかしい吐息を漏らしている。彼女の肉体に埋まっている半身が堅さを増した。  小さな突起をつまんでいた指でこよりを作るように捩ってみると、マリィは喘ぎを漏らしながら体を震わせた。  指の腹でくにくにと揉んでやると、気持ちが良いのか膣内()がきゅっと締まる。  乳輪の縁を指でなぞってやると、マリィは首を横に振りにらんできた。 「やっ! それ、いやっ!」  まるでだだっ子のようにマリィが訴える。 「いじわる……しちゃ、いや……」  涙ぐんでいる目を向けられてしまい、悪戯をやめざるを得なくなった。しかし、欲望は満たされないまま燻っている。真は、体をゆっくり起こして、マリィが飲み込んだままになっていた勃起を引き抜いた。いきり立った逸物は白い粘液ですっかり濡れている。いきなり引き抜いたことがいやなのか、マリィからすがるような目を向けられた上に、首に腕を回された。ちらりとマリィを見ると、今にも泣きそうな表情を浮かべている。それを見たとき、ちくりと胸が痛んだ。  互いに顔を向け合っているうちに、どちらともなく顔を寄せていた。もう少しで、二人の鼻先がくっつきそうなほど。マリィが顔をわずかに傾ける。彼女の唇がわずかに開き、熱っぽい吐息が漏れた。  湿った呼気が唇にかかったとき、真は顔を近づけた。唇が重なり、互いに舌を絡め合う。そして、真はマリィに覆いかぶさって、ゆっくりと腰を沈めたのだった。  意識がゆっくり浮き上がり、全身にけだるさを感じながらまぶたを開くと、マリィが顔を覗き込んでいた。真は、ぼうっとしたまま、マリィをじっと見る。  つい先ほどまで、抱き合っていた女だ。  激しい交わりの末に彼女の中で爆ぜたあと、キスをしながらいつの間にか意識を手放していた。  わずかに笑みを浮かべているマリィを見ているうちに、絶頂に達した彼女が背中にツメを立てたときのことを真は思い出してしまう。  しがみつくように強い力で抱きしめられたとき、火照った肌にかかった彼女の切なげな吐息。そして終わったあとに訪れた時間は、とても優しい時間だった。それらを思い出した途端、胸が熱くなってきた。真はマリィの体に手を伸ばす。だが、ここで予想外のことが起きた。 「何すんのよ!」  伸ばした手をぺちんと叩かれた。顔をふて腐れさせたマリィから、にらみ付けられてしまう。 「……あれ?」  先ほどまでの反応と異なることに違和感を抱き、真は訝しげな顔をした。 「なによ、その目。夢と現実を混同させないでくれる?」 「え? 夢? 現実?」  マリィから問われた言葉の意味が分からず、真は戸惑った。目の前では、マリィが呆れた顔でため息をついている。 「さっきまで見てたものは、夢よ。私のチャームが見せた夢」 「え? チャーム?」 「そう。あなた、その気になると心のガード緩むから、その気にさせてチャームをかけたのよ」 「じゃあ、あれは、全部……」  呆然としながら真が呟くと、マリィがとどめを差してきた。 「あれは全部夢。あなたの好みを探って見せた夢よ。残念でした」  その言葉を耳にして、真は表情こそ変えなかったが、内心ではがっかりとしていた。
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