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第11話

「ああ……」  腹に手を突き男根を飲み込んだまま、マリィはうっとりとした顔で感嘆のため息を吐く。  おととい覗いた姿には到底叶わないけれど、その姿はとても淫らで美しかった。  片や真はと言えば、いつ射精してもおかしくない状態のまま耐えに耐えていた。  勃起を飲み込んだ女陰の奥は、細かな(ひだ)が密に生えそろっている。しかも、完全に飲み込んだ後、突然襞が生き物のようにうねうねと蠢くだけでなく、ぴとぴとと熱を発する皮膚に吸い付いてくるものだから、気持ちが良すぎて意識が溶けてしまう。  しかし射精感が高まると、勃起の根元に巻き付いているマリィの髪が締め付けてくる。  そのせいで根元の疼きと熱は溜まる一方、それなのに肉茎を咥え込んでいる肉壁は責めの手を緩めようとしない。むしろ、精を一滴も漏らさず搾り取ろうとするかのように吸い付く力が強くなっていた。  そんな状態である。性欲が高まれば高まるほど、思考と判断能力は著しく低下するものだ。始めの頃こそ昨夜のようにさせてたまるかと意地になっていたけれど、そのようなものなどもはや風前の灯火のようなものになっている。しかも欲望に飲み込まれたいのに、今度はマリィの髪がそれを許さない。ことの主導権をマリィに握られている有様だ。今、真ができることといえば、この苦しみから一刻も早く解き放たれるときをおとなしく待つしかない。  どこにも放出されないまま溜まる疼きと熱のせいで、理性が溶けていく。  しかし股間から伝う疼痛のせいで、崩れそうな理性が踏みとどまる。  これでは、まるで拷問だ。真は男根から伝う快感が、苦しいものにしか思えなかった。  切れ切れに襲いかかる快感と痛みは、意識をたやすく溶かしていく。  飴と鞭を交互に与えられ続けられれば、鞭のあとに与えられる飴の甘さが強くなる。  それと同じように、痛みのあとの快感はどんどん深さを増していった。  痺れるような快感のせいで朦朧と成り行く意識の中、真は己の半身を咥え込んだ女を見る。  熱に浮かされたような目の前にあるものは、全身を上気させながら体を震わす女の姿だった。 「駄目、もう限界!」  肉付きのよい太ももで真の腰を挟み込んでいたマリィが、切羽詰まった声を出した。そのとき、それまで真を苛んでいたものが瞬時に消える。男根の根元を締め付けていたものが消えた直後、溜まりに溜まっていた疼きが根元から裏筋へと駆け上がった。いきり立った勃起と同じように、玉袋も勢いよくせり上がる。肉竿の中を熱いものがものすごい勢いで駆け抜けた。 「イっ……」  真は迫る射精の前兆を感じ、言葉を詰まらせた。射精間際、小刻みな震えが根元から腰へと走る。動けない体ではあるが、おのずと腰を突き出しながら上体をそらしていた。それまで不本意にも押さえつけられていた急流が、堰をきって一気にあふれ出す。鋭い快感が電流のように体を貫いた。  許容量をはるかに超えた快感が、突如として襲いかかる。意識も感覚も四方八方に飛び散った。自分というものを形作る全てのものが消えうせて、意識を失いそうになったとき、真は見てしまう。全身からまばゆい光を発しながら、恍惚に浸るマリィの姿を。宙をさまよっていた彼女の瞳は、おととい目にしたものと同じ金色だった。  噴き出した汗のせいで肌が冷たくなってきて、真は意識を取り戻した。  高熱が引いたあとのような脱力感が、全身に残っている。  射精した瞬間飛び散った意識も感覚も完全に戻っていない。しかし、何かが乗っかっているようで、体の上に重みを感じた。それに柔らかな熱も。真はゆっくりとまぶたを開いて、目線を下げる。  すぐに目に飛び込んできたものは、鮮やかな赤い髪の毛だった。それを見たとき、真は深いため息を吐く。夢では無かった。その証拠にマリィの体の重みと体温が汗で濡れた肌から伝う。繋がったままで、覆いかぶさるよう彼女は倒れ込んでいた。すうすうと穏やかな寝息が耳に入る。望みのものをたっぷりもらって満足したのだろう。真は夢の中でマリィから言われた言葉を振り返った。 『普通のセックスを三回か、ちょっとだけ我慢するセックスを一回。どっちがいい?』  それを聞かされたときは、意味が分からなかった。しかし、今なら分かる。マリィが言いたかったのは、質より量か、量より質かということだ。しかも、どちらかを二日に一度しないとならないという。 『あなたが好きなこの姿を保つためには必要なのよ』  先ほど店にいた男は、今のこの姿を「マリィの本当の姿」だと言っていた。しかし、マリィの話を思い返せば、目の前にある姿はかりそめのものということになる。 (どういうことだ? 知れば知るほど意味が分からん……)  射精し終えたあとだけに、思考も判断能力も回復し始めていた。そう多くはないけれど、マリィから聞かされた話を一通り振り返ってみるが、理解が追いつかない。  もともと人間とは異なる存在だ。そうであっても仕方がないのかもしれない。真がそう結論づけようとしたそのとき。 「う……ん」  けだるげな声が聞こえてきて、真は再び目線を下げた。すると視線の先で寝ていたはずのマリィが、真の胸に手を突いたあと、のろのろと体を起こす。その様子はけだるげだ。  いまだ赤みを帯びている肌は、汗でしっとりと濡れていた。華奢な肩に、幾筋か赤い髪が張り付いたままになっている。自然と豊かな乳房に目が行ってしまい、真はついつい見始める。  マリィの乳房は、大きい上にボリュームがある。それにお椀型できれいな形をしていた。それに反して乳首は小さくかわいらしい。だが、一つだけ残念だった。それは彼女のかわいらしい乳嘴(にゅうし)が勃起していなかったからだ。  真はセックスしようとしている相手の乳首が、徐々に硬くなることに酷く興奮するタチである。  キスをしながら強弱をつけてもてあそぶうちに、芯を持ったように立ち上がる。それを唇で挟んで引っ張ったり、舌で転がしたりするうちに、どんどん硬くなってくる。  それに女性がオーガズムを迎えた後、乳輪がふっくら盛り上がり、頂きがピンと立ち上がっているのを見るのが好きなのだ。  マリィの薄いピンク色の乳首は、まだ立ち上がっていなかった。それを見ているうちに、むくむくといたずら心が沸き起こり、気がつくと指を伸ばしていた。 「きゃっ!」  真が薄桃色の乳首を柔くつまむと、マリィは目を大きくさせて驚いた。豊満な体がびくっと痙攣したせいで、かわいらしい乳首が指から離れていった。 「かっ、体が動けるようになったからって、なにすんのよ!」  胸を両手で隠しながら体を勢いよく捩らせ、マリィは真をにらみ付けた。恍惚の表情を浮かべていた顔を険しくさせて。  マリィは何かに動揺しているようだった。それが何であるか分からず、真は呆然とした顔で体を隠す彼女を眺めている。  すると、マリィがはっとした顔をしたかと思ったら、いきなり人差し指を突きつけてきた。 「見て!」 「へ?」 「いいから、見て!」  理由も教えてもらえないまま向けられた指を見た瞬間、周りの景色がぐにゃりと歪み、全身から力が抜けていった。
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