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GREEN FIELDS ⑤

 それから彼は泣いてばかり 毎日泣いて泣いてその内、”泣き虫カマキリ”なんて言われて見に来るヤツもいた。 オレたちは彼の事が気になって、”寝床探しの旅”を一旦休止していた。 しばらく経ったある日、彼が言った。  僕、ここにいて今度はあの子のタマゴを守る事にする  彼の視線の先には、最期に彼女が産み遺したタマゴが宝石のように光っていた。 オマエはオレたちと違って、冬は越せない。 オレたちが頑張って背伸びしても届かない所にあるその宝石の下で、泣き腫らしだったけど久しぶりに見せる笑顔で彼は話をした。  ヒラヒラ ヒラヒラって…… キレイだったな…… いっつもね、お花の甘い匂いがする子だったんだ 『お守りなんて、しなくていいよ』 なんて言って……  飛べる彼女と違って、僕の足は遅いものだからいつも置いてけぼりだったけど、気付いたら僕の上にいて笑ってた…… ”ジョシの栄養にもならなかったヤツが、エサの番をしてる”  彼にも聞こえていたかもしれない けれど聞こえていないかのようだった。 キミの大好きだったかわいいトモダチは、”約束”をちゃんと果たして そしてキミも自分で作った”約束”をきちんと果たし、トモダチの元に行った  ”約束”をしてる相手?  さあ…… 大き過ぎて考えた事もない 自分が生まれた時から持ってる時間と同じ 生まれた時から持ってる約束なんだ オレたちは命のすぐそばで生きている それが近過ぎて だからあまり近づき過ぎないようにしてるんだ でもね、自分の事を”好き”だと思ってくれる相手には、オレたちはそれをちゃんと返す  オレたちが見えてる? ((ここで生きてる))  オレたちも君たちの事を知ってる ((ここで一緒に生きてる)) オレたちが持ってる気持ちはね、多分君たちが思ってる以上で限りがないものなんだ 今はお互い離れながらだけど、もしも君たちがオレを見つけてくれたら教えてあげる 本当は君の命ごと愛してる いつもそう思ってるって  それ、ボク分かるよ。そしてボクの気持ちはきっとお兄ちゃんたちにも伝わってる  ま、俺もそうだな……その点、お前らには申し訳ないが恵まれている。 さらに産む事が出来るのなら、俺のタマゴをおばあさんにプレゼントしたいくらいだ。 いつもありがとうって……ってな。  あの子が無事にオトナになるのを見届けなきゃ  ”おやじ”ばかりに取り囲まれて、驚くんじゃねーか?  ええ!ボク、お父さんなの!?スゴイ!! 相方はオレの為だけの音楽を奏で始めた  そんな事、したくなる事ってあるんだ……  自分でも初めてだ……  そう言った彼の翅音は今年一番遠くまで光るように響いた。 それは自分たちの知らない遠くにまで届きそうに。  飽きたとか、興味が別なものになったとか、そんな理由で離れるのとは違う。 お互い離れたくなくて、手を伸ばし合ってそして離れて行かなければならない時があって それをオレたちは生まれた時から知ってる 結び合ってるのは永遠じゃない。 それが嫌だからって、逆らう事はオレたちがいる世界ではない。 上から下へ 降っては乾いて 冷たい夜が明けて 色んな 色んな普通と自然 もしも何かに迷っているのなら 疲れるのなら 泣きたい毎日でいるのなら もっと自然に溶けるようになるといい  オレはそう思うな…… 巡って 宿って そしてオレたちはまた自然に還る オレたちの夏が終わって 生まれた時から知ってる事はあっても、その先の事は自分がなってみないと分からない みんなそこに向かって生きているのは、それも同じ事  ”怖い物知らずの無邪気な女の子と見掛けに合わない寂しがり屋のカマキリ”……  なに?  目が覚めたら……また面白いヤツに会えたらいいな……  俺はお前とデュエットしてみたいな  そうだね……  オレたちはきっとなくならない どこかにきっと小さく残って そして大きなものを包んで行くように広がる オマエが奏でる音楽が、いつまでも胸に残るように オレたちも順々に君たちがいる所にやがて行く 忘れないから 覚えているから 束の間だった時間でも だから また遊ぼう……
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