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エッちゃんがいっぱい(僕らの昆虫採取N&O) ③

「虹生、なんだお前その虫ケースは」 「オレもオレだけの”エッちゃん”を見つけるんだ!そしてオレも!!」  ふう やれやれ…… 俺も大概だが、お前も相当だぞ。まあ仕方ない これが彼女の”マジック”なのだから。  彼女は藤井だけのものではない こんな考えはキケンかな…… 彼女だけではない。俺や虹生、藤井だってそうだ。みんな誰のものでもない。 藤井から彼女を奪い取ろうとしているわけではない。 虹生への熱が冷めたわけでもない。 自然に生まれた自分の気持ちを大事にしたい。大事にしていいと、彼女が許した。 その気持ちを理解してくれる仲間がいるこの環境が、とても居心地が良くて幸せだと思う。 自然にそうなった事を彼女は受け止め、彼はそれをまるごと許した。  自然に身を預けるって事は、自分の中の醜い願望が削ぎ落とされるという事だ。 あんな無垢な瞳の前では、欲の行き先しか考えない自分は酷く醜く感じ、彼女に近付く権利を持たなくなってしまうように思う。もしも俺が乱暴を働こうとしたら、彼はそれを絶対に許さない。 そして俺はこの環境を失う事になるのだろう。…… 彼女のマジックは偉大だ。 彼女がそこかしこに、俺の周りにもいると感じるようになる。  風が静かに気持ちよく自分のそばを流れたら、それは彼女だし。 木漏れ日の中で鳥のさえずりが聞こえて来たら、彼女のぬくもりを感じる。 穏やかな晴れの日に、君がどこかで笑っているのを感じたり。 いつもいつもそう思う。 そんな時に虹生と目が合って、ふたりで理由もなく笑う。 それは以前とは違った温度があるから不思議だ。 彼女は藤井の事が好きだけど、虹生も彼女の事が好きで俺も彼女の事が好き。 それをダメだというヤツはいない。 慈しむ瞳で彼女を見ている虹生を見ると、ああ今日も世界はあたたかい……そう感じる。 他の者にはちょっと理解し難い関係であると、自分でも思う。 それを理解するには、やはりマジックに掛かるのが一番という事だ。 「……ちゃん  ……えふうちゃん……    」  虫採りに夢中になっていた俺たちは、ふたりしてハッと同じものを見た。 俺たちは公園にいるニンゲンには興味がなかった。目的とは全然違う。 モンシロチョウが彼の周りをヒラヒラと飛んでいた。 それはまるで懐かれているように、操っているようにも見えた。 モンシロチョウのヒラヒラとした白い羽と同じように、彼のシャツも風に揺らいでいた。 風が運んできた彼の声に、俺たちはそれまでの驚喜が止んでしまった。 聞こえた……  気のせい?  聞き違い?…… 彼は何て言ってた?  い ま な ん て 言ってた?…… 虹生も答えを知りたい表情で俺の顔を見ていた
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