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Skip 36 エッちゃんがいっぱい(僕らの昆虫採取N&O) ①

 彼の表情が時々 愛しのあの子とかぶって見える時がある。 それがまた楽しみで”ヤローの会合”はよほどの事がない限り、欠席はしない。 当たり前と言っちゃあ当たり前だが、そんな目で彼を見てはいけない。 彼に失礼だろう。  なあ、虹生…… 「ユカリだ……ユカリに違いねえ お前ら! ……やっぱやめとこ プッ」  そんな不気味な後味を含んだ事を言い、落ち合ったこのハンバーガーショップをここを訪れた時と同じ顔をして、彼は出て行った。放課後の空腹は満たされたが、何やら穏やかではない予感がしたのは俺だけではなかった。 「旺汰……」 「う、うん……」 トレーに乗った紙くずをダストボックスに突っ込み、俺たちもそこを出た。 「へえ~お前らって会ってたんだ」 「うん たまにね……向こうから連絡来たり、コッチから誘ったり」 「へ~」 「藤井も来ればいいのにって、彼言ってるよ 寂しいんだよきっと」 「えっ・・ いいよお…」 「アッハッハッハッハッハッ…」 「ところで藤井、”ユカリ”って分かるか ちなみにオトコの」 「ほら、この前ユイヒの話に出て来てたヤツ」 「ソイツがどうしたの?」 どうも口を滑らすのは、俺の特技らしい…… またもややってしまった 彼(虹生)の前で 「やめろ! エ ッ ち ゃ ん が驚いて死んでしまう!! ・・・ハッッッ!」 この前、彼女からこの子をもらった…… 「ああんバス来ちゃった……オータくん、この子をどこかに逃がしておいて じゃあねバイバーイ!」  彼女から手渡されたのは、緑の小さな生き物。それを受け取る時に、少しだけ手が触れた・・・      (( ハート・・・))  ああ…… 虹生が今日いなくて良かった。 藤井がバイトをしていてくれて良かった。 虹生は思い入れのあるマンガの発売日とやらで、委員会の俺を待たずに下校した。 そして彼女とふたり…… 何と言う幸運…… 彼女を独り占めに出来た、幸せな数分間だった…… 「あれ?」 「なに?どうしたの?」 「今見えたの!」 「なに?何がエッちゃん!」  校門を出たバス停までの途中 フェンス下の茂みの中から彼女が見つけた。 彼女と童心に戻って遊んだような一時だった。 「捕まえた!」  藤井はいつもこんな彼女を見てるのかな いつでもこどもの頃に戻れる。 彼女は俺とふたりでいる時でも、自然に振る舞ってくれるようになった。 「見つけるとどうしても黙っていられないの」    彼女に手を振り、バスの姿が見えなくなるまで 俺は一体どのくらいそこに立っていたのか……。 バスの為にここにやって来た者たちからの、熱い視線の洗礼を受けて我に返った。 けれどそんな事はどうって事はない。 彼女からの”オネツ”は俺の胸にまだ残ったまま・・・ その余韻は俺の両手の中もくすぐる。  彼女から受け取ったその小さな生き物を、バス待ちの野蛮な輩に痛めつけられないようにと、そっとそこから離れた。(俺はバスに乗らん)  
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