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ノスタルジック・ユイヒ(昆虫採取) ⑧

「藤井 ナンでオマエも気が付かなかったんだ そんな魔の手が潜んでた事に」 「俺だってあの一回きりの事だったし、まさかこんな事があったなんて知らなかったよ」 「お前……エッちゃんから一瞬たりとも目を離すなよ ナンだったら俺たちが……」 「……大丈夫……エッちゃんから片時も離れないよ 絶対に!」 「……ソレはソレでムカツクな」 「仕方ない虹生”俺たちのかわいいエッちゃん”の為だ 利用出来るものはコイツでも使おう」 「……おい、せっかく本を持って来たのに、見ねーのか」 《 ジーーーーーッ… 》 「ナ… ナンだよ……」 「あ エッちゃん!」 「アーーーッ!! 見てるの!? ユイ!ダメって言ったでしょーーっ!!」 「プッ……恵風もう遅い……ここにいるヤローどもは、お前より俺の方が”かわいいかわいい”と盛り上がっていたんだ」 「エッちゃん!結日の言う事を信じてはいけないよ! 君は”俺だけのかわいいエッちゃん”なんだから」 「クソッ 藤井”俺だけの”なんて言いやがって…… エッちゃん!藤井の言う事も鵜呑みにしてもいけないよ キミは藤井にはもったいない女の子なんだから」 「エッちゃん! さあココ(胡座の中)に座りなよ!」〈パン・パーン〉←自分の脚を叩く音 「ズルイぞ旺汰 エッちゃんオレの所へおいでよ!」 「ナナくんもオータくんも分かってないねエッちゃんは俺の所に来るのが普通さ ね…エッちゃ…」 「私、アイス食べる」 「プッ… 瑞月お前はまだ、食い物には勝てないって事だ…… ショーガネーから俺が恵風の代わりになってやってもいいぞ? プッ」 「!… そうだ結日、お前エッちゃんに成りすました事、他にはないんだろうねえ???」 『 !! 』 「ああ……瑞月安心しろこのアルバム同様、お前は騙せなかった ブフッ」 『 ゆ い ひ !! 』 「まあまあ落ち着け、俺のちょっとしたお遊びだ……今はさすがに出来ないがな残念な事に」 『 あ た り ま え だ !! 』 「エッちゃん!トノサマバッタを持ったオトコには気を付けるんだよ!」 「……?ナニ?突然……」 「恵風……お前”ユカリ”ってヤロー覚えてるか」 「ユカリ?男の子?……」  恵風と彼はいつ会って、何度会って、その時一体どんな話をしたんだろう…… 本人がもう彼を覚えていないようだから、確かめようがない 「その本なあに? ダレの?」 「”ユカリ”のだ “借りっぱなし”になってた」 「ユイのトモダチ?」 「……まあ……そうだ……」 「見てもいい?」  もしかしたら恵風 お前はソイツを忘れていても、ソイツはお前の事を覚えていて、お前の前に現れるかもしれない。 トノサマバッタをお前の為に捕まえて…… ”あの本”と交換してくれない? そう言って、お前の前に現れるかもしれない 夏になったら…… 「 !! 」  彼らが逃げ出してしまわないようにと、ギュッと口を握るようにそれまでは持っていた。 けれど一匹残らず彼らは俺たちの元を離れ、自分たちの世界に戻って行ってしまった。 カラになってしまった袋まで風に持って行かれ、俺の手元には何も残らなかった。 彼の両手が俺の頬を包むように触り、静かに唇を離した  夕方の風が汗を掻いた肌を涼しくさせていたから、彼の手が安心するあたたかさに感じた。 風の音と流れる草や木々の音 それしか耳に入って来ない 自分のすぐ前に出来た影と、他人の自分の顔に掛かる吐息 重なった唇のやわらかさと彼の体温…… 自分の中に刻む前にそれらは全て驚きと一緒に飛び散った。 夢を見ているようだった。  彼から預かった少し痛んだその立派な本は、小学生の俺には高尚過ぎてつまらないものだった。何もする事がない退屈な時でも、申し訳ないが見る気にもならない。 置きっ放しになったその本を、ボンヤリ見ている時だった。 開ききった跡がある事に気が付いた。 ヒカリがこの本の真似ばかりをする…………  俺にはやっぱり意味が分からなくて、恵風だったら分かるのだろうかと何度か聞いてみようとした事があった。 けれどそうするためには引っ張り出さなければいけない秘密がある。 そのうちにその本は棚にしまわれ、持っていたのも忘れる存在になった。 お前がどんなヤローになったのか…… ちょっと気になるな…………
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