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ノスタルジック・ユイヒ(昆虫採取) ③

 あれは下校中の事だ 俺はひとりで歩いていた。 恵風より先に家に着き、アイツに食われる前に冷蔵庫のプリンを食ってしまわなければ…… 何て事を考えながらひたすら歩いていた。 『・・・・・』 「そんな心配をしなければならないほど、アイツの食い意地はスゲーんだ! 俺は何度も食い損なってるふたつ目のプリン! 次こそは俺が食う番だ!!……お前らはそんなしょっぱい思いをした事はないだろう」 「……エッちゃんってかわいいんだね……」    ナナオ… そこは”意地汚い”っていうのが正解じゃねーのか せっかくここに”どうかしちまったヤロー”が三人も集まったんだ 恵風の事を暴露してやる……  チャンスだ結日! そして俺に気が向くといいさ… ”俺のかわいい結日”……言わせてやるよ…… 「ブフッ」 『?…』 「おーい!」  後ろから誰かを呼ぶ声 振り返ると話をした事もない知らないヤツが目に入った。 そんなヤツに俺がいきなり”おーい”と呼ばれるわけがない。 けれどソイツはまるで俺を呼んでるように見える。 何か落し物でもしただろうか…… いや… そんなはずは…… ソイツは俺に向かって走って来る そして俺のそばには…… 俺しかいない…… ナンだ!? コイツはやっぱり俺に用があって俺に”おーい”と言ってるのだろうか…… そこでハッとした。 コイツは俺ではなくて、”恵風”を呼んでるつもりなのかもしれない。  こんな事は珍しい事ではなかった。 俺と恵風を間違えるヤツなんてその頃はしょっちゅうだ。 母親の趣味が表れている俺たちのおかっぱヘアー、寸分変わらぬ背格好もまだ幼児体型の方が勝り、服装、背負ってるカバン… ほとんど男女の区切り俺たちの区切りまでもないような見掛けだった。 付き合いの浅い者や時間を空けて会う者、そんなヤツには余計に難問クイズのように分かりづらいだろう。 それで言ったら、コイツは前者か… と俺は勝手にアタリを付けた。  ただ俺たちの場合男と女だ。 そこでウッカリすると大変な事を招いてしまい、最悪お互いの交友関係を壊す恐れを含んでいる。だから相手が俺たちを間違っている、と気付いた時にはちゃんと言うようにはしていた。 じゃないと… 「ねえ恵風ちゃん ゲッキンくんが恵風ちゃんの事”かわいい”って言ってたよ」  俺が聞いてもショーガネー事を、恵風の代わりに”かわいい恵風”として俺が聞くハメになってしまう。さらに面倒なのはそれを”本人”に報告する事。 「お前の事が”かわいい”らしい… ゲッキンが……・・ザワッ」 「うそおおおお!! ねえ結日ソレっていつ?ソレからどうなったの!?コタエテ結日!!」 「アッハッハッハッハッハッハッ… 前から思ってたんだけど、藤井って怒ると妙なカンジになるよね」 「藤井落ち着け小学生の頃の事だろ? ……虹生、ソレは言わん方がいいぞ彼は気付いてないのかもしれない……」 「……ったく、マヌケなヤローめ……」  黙ってやり過ごす事も可能だが、それこそさっきのようなトラブルを招く事になったりと俺も落ち着かない。だからそれを回避するために 「悪い! 俺は結日だ!」  ちゃんと自分は恵風じゃない、と言うようにしないとお互い知られたくない事まで さらには自分には関係ない者の思いも寄らない事までを知るハメになったり それはそれで面白そうだが後から面倒になる場合の方が多くだ。  ただ不思議な事に俺ひとりの時はよく恵風に間違われていたが、恵風が俺と間違われる事は少なかったようだ。俺と間違われても寸前で”ごめん間違った”とそればかりだったそうだ。 俺本人にはよく分からない事だ。 「何でだろうな 恵風からオンナ臭さがもう出てたって事か?」 『・・・・・』((ハート)) 「バカヤロウ! 恵風のそばには貼り付くようにいつもお前がいて、睨みを利かしてたからに決まってるだろう! ……お前のせいで俺と恵風を間違った罪のない哀れなヤローは慌てて逃げていたんだ… お前が恵風の隣にいない方が珍しいってくらいだ!」 「藤井コノヤロウ!オマエなんてまたくすぐってコシヌケにしてやるからな!」 「!… やだ! もうあんな思いはしたくない! いーよエッちゃんの所に行くから」 「そうはさせないよ! フジイ……」 「なんだ?楽しそうだな」 「旺汰、後のお楽しみだ…… 結日、今日はレッスン行けるかあ? 今日は旺汰もいるしさぞ……」 「!!…ちょっとナナくんナニ考えてるの!?」 「ナニってオマエ… その為にここに来たんだよなあ?(クスッ)」 「イヤーーーーーーーッッ!!」←ミズキ
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