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第37話

 彼女を抱きかかえながら寝室へ向かう途中、不安げな顔を向けられた。 「あの……」 「ん?」 「その……、シャワー……」  言いにくそうに話す彼女を見れば、頬が少し赤くなっていた。 「ああ、心配ないよ。寝室《あっち》にバスルームがあるから一緒に入ろう」 「へっ?!」  彼女が驚いた顔で大きな声を出した。そして視線をさまよわせ、その姿がなんだか戸惑っているように見える。すると更に顔を赤くしながら彼女が小さな声でつぶやいた。 「えっと……」  顔を俯かせなにやら考えこんでいる。そんな彼女の様子につい意地悪をしたくなって仕方がなかった。 「どうしたの?」 「あの、今日は、その、何も準備してない……」 「準備? なんの?」 「着替えとか、その、いろいろ……」  彼女の言葉が尻すぼみになっていく。彼女がホテル《ここ》に宿泊する用意をしていないのはわかっていた。部屋に来たとき彼女が持っていたバックを見て、ただ俺に会うことだけしか考えてなかったのだろうとは思っていたが。生憎顔を合わせて食事して、それで「さよなら」なんてできっこない。 「ふうん……。会って気持ちを言ったら帰るつもりだったんだ」 「えっ?」 「俺は悠里と二人っきりでゆっくり過ごしたかったのにな……」  わざとらしくしょぼくれて見せると、彼女が小さな唇を尖らせてふて腐れたような顔をする。 「だって、平日、でしょ? 明日も仕事が……」 「タクシーで送っていく。明日の朝。それならいいだろう?」 「それはだめ! 絶対だめ!」 「なんで? 俺がそうしたいの。さ、ついたよ」 「えっ!」  彼女と押し問答をしているうちに寝室の前についていた。彼女はびっくりした顔で、重厚さを漂わせた部屋の扉を凝視している。彼女を抱きかかえたまま扉のドアノブを開こうとしたのだが、片手一本で彼女の体を支えられるほどの体力はない。非常に残念だけれど、ゆっくりと彼女の体を離し、俺の隣から逃げ出さないように、彼女の腰を抱きながら扉を開いた。 「入って、悠里」  呆然となっている彼女の顔を覗き込み声をかけると、彼女ははっと我に返ったのかおずおずと部屋の中に足をふみいれた。彼女の背後について後ろ手で扉を閉めたあと、先を歩きながら部屋の中を眺めている彼女を抱きしめた。柔らかな香りがする。甘い甘い彼女の香りを胸いっぱい吸い込んで、彼女の体をきつく抱きしめた。 「悠里……」  彼女の名を呼ぶと、彼女の体を抱きしめている俺の腕に彼女がしがみついてきた。 「好きだよ、悠里。もう止められない……」  彼女への思いが一気にあふれ出してしまい、彼女の体をくるりと振り向かせ唇を重ねた。触れ合うだけのキスじゃもう我慢できそうにない。誘うように彼女の唇を舌先でなぞると、かすかに開いた唇の合間からため息にも似た吐息が漏れ始めた。水気を帯びた彼女の吐息が聞こえる。顎のラインから小さな耳に舌を這わせると、くすぐったいのか彼女が体をよじった。 「もう、逃がさないよ」 「んっ……」  体をよじらせながら逃げようとしている彼女の体を抱き寄せると、小さな耳珠を唇で挟み込んだ。舌先で転がすようにすると、彼女の腕が背中にまわってきて俺にしがみついていた。彼女の体が小刻みに震え始め、よろよろと足元がおぼつかなくなっている。そのままベッドに行きたいところだが――――。 「一緒に、風呂入ろうか」  耳に唇を押し付けながら問いかけると、彼女は呼吸を弾ませながら小さく頷いた。 「なんだ、これ……」  今俺の目の前にある白い浴槽の中には、茶色い液体があふれんばかりになっている。まるでチョコレートのような甘い香りがバスルームのなかに漂っていて、その香りで酔いそうになっていた。  恥ずかしがる彼女の衣類を脱がせるだけでかなり体力を消耗したのに、いきなり目の前に現れたこの茶色の湯をどうしろというのだろう。もしかしたら田沢のやつがなにか仕掛けをしたのではないかと気がついて、バスタオルを体に巻いている彼女のそばから離れて浴槽に手を差し入れた。  手のひらにぬるりとした感触が伝わる。これはいわゆるローション風呂というやつではないかと頭に浮かんだ。田沢、お前はいったい何を期待しているのだ。もともとこの部屋は、田沢が横沢と過ごすために予約した部屋とは聞かされているが、ローション風呂は彼女から聞かされていない。 (どうしたものかな……)  ちらと彼女のほうへ顔を向けると、彼女は驚いているのか目を見開いたまま呆然となっていた。 「悠里、入ってみる?」 「はい?」 「これなら見えないし。俺は見ないようにするから、入っておいで」  予期せぬ事態に動揺していることを隠しながら、余裕の顔で彼女に告げる。彼女が見ている前で軽くシャワーを浴びて体を濡らし、彼女の姿を見ないようにして浴槽の中に体を沈めた。ヌルヌルとした感触が肌にまとわりつく。彼女に背を向けてそのままでいると、彼女が体に巻いていたバスタオルを取り払う音がする。ついごくりとつばを飲み込んだ。  シャワーの水音が背後から聞こえ始めた。彼女がボディソープを使っているのか、石鹸を思わせる香りが漂い始めた。正直このチョコレートの甘い香りのほうが強すぎて、かすかに香る石鹸の香りが断続的にしか感じられない。彼女の肌から立ち上がる香りは、濃厚な甘いものより、淡く儚げな石鹸の香りのほうが似合う。  少しぬるめの湯に浸かっていると、すぐ背後に彼女の気配を感じた。とぷん、と音がする。湯が揺らめいた。すると彼女が俺の背中に抱きついてきて、彼女の柔らかな乳房の感触が伝わってきた。 「悠里、おっぱい……」 「え? あ! きゃっ!」  たぷんと湯を揺らしながら彼女の体がいきなり離れ、湯が波立っている。言わなきゃ良かったと後悔してももう遅い。つい俺が口走ったせいで、彼女がそれに気づいてしまったことを心の底から悔いていた。  ひとつ大きなため息をこぼし振り向くと、彼女が泣きそうな顔で両手で乳房を隠している。彼女へ近づき腰を引き寄せると、そのまま彼女が腕のなかに飛び込んできた。彼女の体をしっかりと抱きしめると、ペニスが硬さを増してきたのかそこに意識が向かい始める。 「ほら風邪ひくから肩まで入って」  彼女の体を反転させて、体を俺にもたれかけさせる。すると彼女が少しずつ体の力を緩め始め、ほうっと息を吐きながら、両手を持ち上げとろとろのローションと化した湯の感触を楽しんでいるようだった。 「本当にあったんだ……」 「ん? ああ、|ローション風呂《これ》か……」 「はい、初めてだから驚いちゃって」 「だよね、俺も初めてだ……」  彼女の下腹を抱きかかえるようにして指先をわずかに滑らせてみると、なるほどとろとろで滑りがいい。ついいたずら心に火がついた。彼女はまだ湯をすくってその感触を楽しんでいる。下腹から乳房を両脇から持ち上げると、彼女が声を漏らした。 「あ……っ」  ぽちゃんとすくいあげた湯が零れ落ちた音がする。一瞬彼女の体が震えたが、まるで石のように固まってしまい、そのまま動かなくなってしまった。彼女の柔らかな乳房を両手で包み、ゆっくりとこね回す。指先に当たる乳首が少しずつ硬くなってきた。乳房を撫でながらそこの先端の蕾を転がし続けると、彼女が体をよじらせる。  荒い息遣いがバスルームに響く。彼女が腰を揺らすたび、俺のペニスを刺激してどんどん硬く張り詰めてくる。初めの頃こそ体をよじりそこから逃げようとしていた彼女だが、乳房と乳首の愛撫を続けているうちに、もっともっととねだるように乳房を突き出していた。  彼女が後ろにいる俺の腕にすがりついてきた。彼女の脚がぬるみのある湯のなかでせわしくなく動き始める。浴槽の底をつま先で引っかいているのか、その動きに合わせて湯が波立ち、チョコレートの甘い香りにすっかり酔いそうになっていた。彼女の切なげな息遣いと、途切れ途切れに漏れる喘ぎがたまらない。  片手で彼女の乳房への愛撫を続け、もう片方を腹から足の付け根に滑らせた。わざと焦らすように腿へ伸ばしそこをゆっくりと撫でると、彼女の脚がゆっくりと開いた。柔らかな肌の上をぬるみを帯びた湯越しに撫でれば、彼女が背を反らし尻のあわいにペニスを挟み込み、そこを揺らし始める。 「悠里、かわいい……」  すっかり赤くなった耳元で囁くと、彼女が堪えきれぬのか短い喘ぎを漏らした。彼女の耳に舌を這わせながら、足の付け根に手を差し入れた。柔らかな草を思わせる彼女の和毛を撫でながら、更に指先を奥に進ませる。俺の手の感触に気づいたのか、彼女の腰の揺らめきが少し大きくなっていた。秘所を手ですっぽりと覆い、そのままじっとする。かすかに指先を動かすと、明らかに湯とは違うぬめりを感じた。秘裂を指でなぞり、柔らかな花弁の感触を味わった。触れていた彼女の乳首が硬くそそり立ちそれをきゅっと指で摘む。すると彼女は、息も絶え絶えになりながら、俺の名前を呼んだ。 「浩正、さん……」 「どうした?」  彼女がいま何を一番求めているかなど、愚問に等しい。だが彼女はそれを言おうとしない。 「どうしてほしい? どこに触れてほしい? 教えてくれなきゃ、どうしたらいいのか分からないよ」  耳元で囁き、音を立てて耳にキスした。彼女は何かを言いたげなのに、体をふるふると震わせて耐えている。羞恥が彼女を襲うたび、おそらく快感がどんどん強くなっているのだろう。彼女はそれに必死になって耐えていた。彼女がどれだけ俺を求めているのかはっきりとわかる。答えを促すように彼女の乳首を指先で撫でると、濡れた唇からその言葉が飛び出した。 「お願い、もう……」 「もう、なんだい?」 「もう……、ダメっ! やっ! ああっ!」  彼女が叫んだ瞬間、彼女のクリトリスを指で軽く押しつぶしながら転がすと、体をブルブルと小刻みに震わせながら彼女は背中をのけぞらし、そのまま一気にオーガズムへと達した。
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