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第25話

 宿に戻った後、彼女とともにフロントへ向かう。部屋で夕食をとるつもりだったけれど、二人きりになったとたんに何かが壊れてしまいそうで怖かった。だから、夕食をバイキングに変えてもらい、そのまま彼女と会場へと向かったのだ。  一月最初の週末を迎えた旅館は、年始のあわただしさを癒やす客でごった返していた。言うまでもないが広間には、その客が押し寄せていて結構なにぎやかさになっている。そしていまはこの賑やかさが、今の自分にとって救いのように思えて仕方がない。  白い皿を手に取って、それぞれ食べるものを皿に盛り付ける。空いていたテーブルにつき、地蔵めぐりの途中で見かけた風景や、他愛ない世間話に興じながら食事をとっていた。 「そうか市役所勤務か、そりゃまたストレス溜まるだろ」 「余り気にしないようにしているんですけど、知らず知らず溜まることもありますからね」 「確かに。しかもストレスは思いも寄らない方向に影響することもあるからね。適度に発散しないと駄目だよ」  思い思いに盛り付けた食事を食べていたのだが、時折彼女の顔から笑顔が消えていて、それをあえて見ないように話し続けていた。  だが夕食をとり終え部屋に戻る途中、ずっと抑え続けていた何かがあふれ出そうになっていて、なんとか理性で抑え込んでいるけれどそれにだって限界がある。繋いだ彼女の手の感触が、立ち上る香りがどんどん自分の中の感情をあおり立てていた。  じっとりと全身の皮膚から汗が噴き出し、どんどん何かに急かされるような焦燥感を覚えた。部屋の格子戸を開き、彼女を部屋に向かわせる。彼女の無防備な背中を抱きしめたくて仕方がない。いやそればかりではない、荒々しく自分を刻み付けるように抱いて忘れられなくしてやりたい。そんな思いが欲情をますます煽り、体が炎に包まれたように熱くなる。  部屋の障子を開いた瞬間、自分の中の理性が壊れた。彼女の背後から強く抱きしめると、彼女は驚き体をよじり逃げようとする。 「悠里……」  彼女の耳に唇を押し付けて名を呼ぶと、彼女はそれを拒むように頭を振り始めた。硬く目を瞑り、顔を俯かせている。それなのに抑えきず、うわごとのように彼女の名を呼び続けた。 「悠里、悠里……」  彼女が体を震わせながら体を捩らせる。全身で俺を拒むように。彼女の体を背後から羽交いに抱きながら、部屋の奥へと進んだ。  彼女が着ていた上着のすそから手を差し入れて、夢中になって胸を揉みしだいた。乱れた長い髪の間に見えた白いうなじに唇を押し付ける。ブラを性急に引き上げ、たゆんと揺れる豊かな乳房を鷲掴みにして、がむしゃらに捏ねまくっていた。手のひらで覆っていた尖りがふっくらと立ち上がり、その存在を主張し始める。  吸い付いた彼女のうなじからかすかに甘い香りが立ち上ってきて、少しずつ動きが緩慢なものに変わっていく。それまで下腹を押さえていた手を腿に滑らせ、厚手のスカートの裾を捲り上げた。その内側に手を差し込んだとき、彼女がまた身を捩る。 「待って、待って!」  今にも泣きそうな彼女の声が耳に入る。スカートの内側に差し込んだ腕を彼女が掴んで止めようとする。 「待たない、もう、待てない。悠里、欲しい」  言葉とともに体の内側から溢れる熱を吐き出そうとするが、彼女に触れているとますます熱が溜っていく。腕を掴んでいた彼女の腕が震えだし、そしてすぐにすすり泣くような彼女の声が聞こえてきた。 「待って、お願い、ベッドで……」 「いやだ、このまま抱く」  有無を言わせぬように彼女の乳房を存分に揉みながら、しっとりと汗ばむ内ももを探り秘所へ手を差し込んだ。そのとき彼女の体が跳ねた。湿り気を帯びた薄い布地越しに、彼女の柔肉の感触とぬめりを指先に感じる。濡れている。求められている。張り詰めたペニスが痛いくらい怒張した。  布地越しに秘所を弄りながら、彼女の肉付きのいい尻たぶにペニスを押し付ける。乳房を揺さぶってみせると、体がぶるぶると震えだした。柔い肌がどんどん熱くなってきて、汗をかき始めているのか、しっとりとした肌の感触が乳房を揉みしだいている手のひらから伝わってくる。乳首がぷくんと硬くなり、そこを指で転がそうとしたとき彼女が泣きながら叫んだ。 「お願い。待って!」  その声を聞いたとき、我に返った。今まで暴れ狂っていた嵐が一瞬でおさまって、彼女のしっとりとしたうなじに唇を押し付けながら問いかける。柔らかな香りがする。 「……ベッドで待ってて」  さして思い当たる節が見当たらず、だからといってこのまま彼女を欲望のままに抱いてしまえば、彼女は悲しむに違いない。俺の腕を掴んでいる彼女の手が震えている。 「わかった。待ってる」  うなじに強く吸い付くと、そこがほんのりと赤くなり、それを目にしたとき愉悦を感じた。それを見ながら彼女の体から離れ、寝室へと向かうことにした。  薄闇が広がる寝室に、明るい月明かりが差し込んで、ベッドを照らす。そこに腰掛け、着ている衣服を脱ぎだすと、火照った体にひんやりとした空気が触れた。  夜の空気にふれたとき、どうにか落ち着きを取り戻すことができた。あのとき彼女が声を上げなかったら、本能のままに荒々しく抱いていたに違いない。今だって暴れだしそうな欲望が、体の内側で出口を求め暴れまわっているのだから。  白いうなじにつけた赤い痕を見たとき、もっと所有を示す赤い痕を残したくて仕方がなかった。もし今夜自分が持つすべての手管で彼女を抱けば、どんなふうに彼女は乱れるだろう。もし今夜あの無垢に近い体に快楽を与えるだけ与えたら、彼女はどんな声をあげるのだろう。欲望がどんどんどす黒いものへ変わり始める。あのときと同じように。  恋人が自分から離れられないように、彼女の体が悲鳴を上げるまで快楽を刻み込んだときだ。そのときと全く同じ暗い興奮を覚えた。淫らな姿に変わる彼女を頭の中で思い浮かべたとき、暗い愉悦が心に広がり始めた。それとともに、体の奥からふつふつと熱いものが滾ってくる。それをどうにか抑えこもうとするけれど、あとからあとから溢れてくる。やがて全身が炎に包まれたように熱くなり、着ているものを手荒に脱いで放り投げた。  ひんやりした空気が全身を掠めるように撫でる。それまで昂ぶっていた感情が徐々に鎮まり、ほの暗い愉悦は収まってきた。だが体の一点だけが熱を失うことなく、腹にくっつきそうなほどそそり立っている。  白く輝く満月を眺めているうちに、ただ純粋に彼女を求める欲望がふつふつと湧き上がってきた。すると背後から足音が聞こえてきた。ゆっくり振り向くと、黒いワンピースを身に着けた彼女が部屋の入り口に立っていた。
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