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第18話

「湯加減はどう?」  彼の声が背後から聞こえてきて、体がびくんと震えた。 「だ、大丈夫です」  緊張のせいで言葉がうまく話せない。心臓が忙しなく脈打ち、息苦しい。 「そう、良かった」  優しい声が聞こえた直後湯が揺らめき、彼が入ってきたのだと分かった。波立った湯が背中に当たり、緊張で体が震えだす。背中に当たる波が大きなものになってきて、すぐ背後に彼の気配を感じ取ったとき、息が止まった。  一瞬のうちに私の世界からそれまで感じていたものがすべて消え去った。冷たい冬の空気。肌に掛かっていた湯気。漂う温泉の匂いや、湯が流れる音。そのとき私が感じていたのは、背後にいるであろう彼の気配だけ。  彼の視線をうなじに感じる。そこからから背中にかけて引きつるような震えが走った。二人の間に漂う湯気の揺らめきを背後で感じた直後、背後から温かいものに包まれた。胸元に目を向けると、彼の両腕に羽交いにされて抱きしめられている。 「きれいな肌だ」  低い声が肩越しに聞こえてき、それにどう返したらいいのか分からない。張り裂けてしまいそうなほど心臓がばくばくと暴れだし、息苦しくて仕方ない。だけどその息苦しさは、とても甘く切ないものだった。 「肩、冷えてる」  掠れた声を耳にしたとき、居たたまれずに胸元を覆い隠すタオルを握りしめる。そのままじっとしていると、うなじに柔らかいものが触れた。緊張のせいですっかり過敏になった肌の上を、まるで生き物のように這うその動きに、堪らず声が漏れてしまう。 「ん……っ」  くすぐったいとは違う。彼が口づけるたび、甘い痺れとともにその場所が熱を帯びていく。ところどころに散らされた痺れと熱が体の奥に向かっていき、そこから疼きが波紋のように全身へと広がった。その疼きに耐え兼ねて体を捩らせるが、その動きを彼の腕がやんわりと封じ込める。体を押さえつける腕に手を伸ばそうとしたら、彼の手が体を覆っていたバスタオルに伸びてきて、ゆっくりと取り払われた。  露わにされたところに湯の熱さが直に触れ、火照り始めていた肌を更に熱くさせる。私の体と彼の体を隔てていたものがなくなってしまい、男の硬い体の感触が背中に伝ってきた。それまで体を羽交いにしていた腕は、腰にしっかりと回されている。彼の腕が下腹に当たり、そこに意識が向かいそうになっていた。  絶え間なく唇を押し付けられて、それに心地よさを感じていると、腰と背中の間に何かを押し付けられた。それはとても硬かった。それに意識を向けたとき、それがなんであるか分かってしまい、とっさに逃げようとしたが彼の腕に阻まれてしまう。それだけでなくそれを押し付けられた。 「あ……」  カっと体が熱くなり、鼻から声が漏れてしまう。その声は自分で発したとは思えないほど、甘くいやらしいものだった。その直後、耳孔に濡れたものがぬるりと入り込んできた。反射的に肩を竦ませるが、背後にいる彼がそれを阻むように身を乗り出してきた。 「い、いや……」  急に怖くなり彼の腕の中から逃れようとしたけれど、彼の腕は解けなかった。彼の舌は恥ずかしいくらいに音を立てて私の耳を犯していく。薄い皮膚を唾液にまみれた熱い舌で擦られれば、どうにかなってしまいそうだった。粘ついた水音と彼の切羽詰まったような息遣い。そして腰に当たる彼の欲望の塊から伝うもの。それらが私の思考をどろどろに溶かしていく。 「はあ……っ」  体の内側に籠もる一方の熱を吐き出すように漏らせば、勝手に声まで漏れていた。そしてその声を合図に彼の手が動き始める。下腹を押さえつけていた両手が肌の上をすっと滑るように動き、そのまま胸を包んだ。彼の指がふくらみに掛かり、手のひらには――――。 「硬くなってる」  耳孔を解放されたあと、からかうような響きが混じった声で告げられた。唾液で濡れた耳孔に彼の呼気がかかってしまい、それで肩を竦ませてしまう。どこが硬くなっているかなど、言われなくても分かっていた。彼は手のひらを動かして、そこを優しく捏ねている。ぼんやりとした快感がそこからじわじわ迫ってきて、どうにももどかしい気持ちになっていた。 「もっと触ってほしい? 例えばこんなふうに」  優しい声音で尋ねられ、何も考えずに刻々と頷いた。するとぼんやりとした快感が、少よりはっきりしたものへと変わる。指先だけでそこを掠められるたびに体がびくびくと跳ね上がり、下腹の奥が切なく疼いた。胸のふくらみがわずかに内側から張っているような気がする。背中をのけ反らせ、彼に肩を押し付けると、自然と胸を突き出す姿になっていた。 「可愛いおねだりだな」 「っあ……っ‼」  頂きをキュッと摘ままれ、今度こそはっきりとした快感とともに痛みが走った。彼の手を掴んでいる手が震えただけでなく、全身が震え出す。強弱をつけて捩られるたび、甘ったるい声が鼻から抜けていった。 「女性の体には男のペニスと同じように勃起する場所が二つあるんだよ。ここがその一つ目、もうすっかり勃起してる。分かるだろ?」  息を弾ませながら彼が耳元で話す。まるで湯あたりおこしたような状態になっていて、ぼんやりとしながら聞いていると、片手だけ胸から離れていった。左のふくらみを揉みしだきながら、彼の右手は腹を掠め、だらしなく開いている腿にたどり着いた。腿の感触を確かめるようになぞりながら、彼の右手は足の付け根に伸びていく。とっさに両脚を閉じようとしたけれど間に合わず、彼はその場所を手で包み込んでいた。  手のひら全体で優しく摩られて、体の奥から何かが染み出してきた。彼の指先がそこの周りをなぞり始め、その動きに思わず腰が揺れてしまう。 「……こら」  咎めるような言葉が耳に入ったとき、押し付けられたままになっていた彼のものが先ほどより硬くなっていることに気がついた。知らず知らず腰を動かしていたせいで、それを刺激していたらしく、それは既にすっかり硬く張り詰めている。 「もう、痛いくらいだ」 「痛い、の?」 「ああ、誰かさんのおかげでね」  からかいを含んだような彼の声が聞こえた直後、頬に唇を押し付けられた。ゆっくりと離れたあと、彼は再び私に問いかける。 「もう一つはどこだか分かるかい?」 「……え?」 「これと同じように勃起するところ」  そう言いながら彼は硬くなっているものを、私の腰にぐいと押し付けてわずかに揺らめかせた。彼の右手が覆う場所がそれに呼応するようにきゅんと締まる。その動きを感じたとき、下腹に締め付けられるような痛みを感じた。 「教えてあげる。そこで得られる快感も」  すると彼の指が誰にも触れさせたことがない場所をなぞり始めた。とっさにそれから逃げようとしたのに、強い力で押さえ付けられてしまう。そしてその場所の感触を確かめるように、ゆっくりとした動きでそこを撫で始めた。触れられた場所がじわじわと熱くなり、淡い快感がそこから生まれていく。  やがて彼の猛ったものを刺激するように、自然に腰を揺らめかせていた。その動きが激しくなるたびに胸を揉んでいる手の動きが荒々しくなってきて、それぞれの場所で感じている快感が縒り合わされて強いものへと変わっていく。切羽詰まったような彼の息遣いと、胸を揉みしだく荒々しい手つき。だけど誰にも触れさせたことがない場所をなぞる指の動きはとても優しい。  そしてそこを軽く触れられた瞬間、それまで感じたことがないような強い快感が私を襲い、背筋にびりびりと電流のようなものが走った。とっさに声を漏らしそうになってしまい、あわてて手で口を押さえつける。それなのに彼の指は動きを止めようとしないばかりか、更に執拗にそこを撫で続けている。 「ほら、もうぷっくりと膨らんでる。分かるかい?」  彼の指がそこを撫でるように摩るたび、鋭い快感が襲い掛かる。彼の逞しい胸に背を預け、腰を突き上げたい衝動が襲ってきた。それをどうにか押しとどめようとするけれど、自然と腰が動いてしまう。  ひくひくと切なく蠢く場所の奥が、何かを求めるように疼きだした。その疼きを逃がそうとすると、腰が更に揺らめいてしまう。 「気持ちいい?」  息がすっかり上がってしまい、息苦しさを感じていたが、それだけではなかった。体の内側に溜まった熱が、今にも弾けてしまいそうなほど膨れ上がり、熱くてたまらない。彼の手が触れる場所からじわじわと快感が押し寄せてきて、理性を飴のように溶かしていった。朦朧となりながらもそれらに耐えていると、彼が摘まんでいる場所から痛みが走り、同時に摩っていた場所から強烈な快感が脳天まで突き抜けた。尻に力が入る。足が小刻みに震えだした。わけもわからず頭を振りながら、敷石を足の指先で引っかいていた。  意識が一気に高みに押し上げられた瞬間、胎の奥にきゅうっと締め付けられるような痛みを感じた。そこから先は何がなんだか分からない。五感すべてが解き放たれているのか、それとも体の内側に集まっているのか訳がわからぬ状態で、私は恐怖の余り叫んでいた。 「いや、いやあああ!」  今まで感じたことがない強烈な快感に恐れをなしてしまい、彼の腕に必死になってしがみついていた。 「怖くないよ。そのまま何も考えないで、全てを受け入れてごらん」  なだめるような優しい声が聞こえた。耳や頬に柔らかいものを押し付けられて、ぎゅっと体を抱きしめられた後、私は体を突き抜ける強烈な快感をそのまま受け入れた
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