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Act.11

 長い時をかけて、どちらからともなく唇が離れた。 「――そろそろ行かないと……」  砂夜が立ち上がろうとするのを、俺は、咄嗟に腕を掴んで引き止めた。 「――あの時と進歩ないよ、宮崎……」  困ったように、砂夜が苦笑いする。  多分、今の俺は今にも泣き出してしまいそうな顔をしているに違いない。 「私は見守ってる。宮崎のことをずっと……。姿は見えなくても、私はちゃんと、宮崎の側にいるから。だから心配しないで」  砂夜は一度、その場に屈み込んだ。  何をするのかと思ったら、落ちたままになっていたジッポー入りの小箱を拾い上げ、俺の手に握らせた。 「これも、捨てる気がないならちゃんと使ってやってよ。箱にしまいっ放しじゃ、ただの宝の持ち腐れだよ?」  特注で文字入れしてもらって高く付いたんだから、と、最後に付け足した。  俺は再び渡されたジッポーを見つめ、〈Love forever〉の刻印を親指で擦る。 「強く生きな」  砂夜は俺の手をそっと解き、身体をふわりと宙に浮かせる。  と、背中から、一対の翼が姿を現した。  俺を振り返ることもなく、強気な天使は星空に向かって羽ばたいてゆく。  砂夜の姿が完全に見えなくなるまで、そう時間はかからなかった。  砂夜は今度こそ、俺から離れて行ってしまった。  残されたのは、ジッポーと手紙だけだった。 「――Love forever……」  俺はひとりごちると、初めて、ジッポーを点火させた。  カシャリと音が鳴り、橙色の炎が、風に煽られながら揺らめく。  その時、目の前に一粒の欠片がポツリと落ちてきた。  俺は夜空を仰いだ。  星が瞬く中、生まれたての雪が、ひとつ、またひとつと舞い降りる。  まさかとは思った。  けれども、偶然にしては出来過ぎている。 「――砂夜……?」  一度も本人に呼んだことのない下の名前で問いかけるが、返事は戻ってこない。 「俺への誕生日とクリスマスプレゼントってトコか?」  ついさっきまで感じていた哀しみは嘘のように、俺の心に、温かな気持ちが広がっていた。  俺はジッポーに向けて、白い息を吹きかける。  ケーキはないけれど、ささやかな蝋燭代わりだ。  ◆◇◆◇  砂夜、お前は、時間は戻せない、って言ってた。  けど、生まれ変わりだったらありだよな?  俺とお前、縁があるのなら、来世では一緒に幸せになろう。  その時は、俺からお前に言ってやるよ。  永遠に、お前を愛してる―― [Love forever-End]
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