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Act.3-02

「――信じてないね?」  信じる信じない以前の問題だろ、とは言えなかった。  口を開こうとしたら、女に鋭い視線を向けられてしまったからだ。  女には、口を噤ませてしまうほどの眼力が備わっている。  天使よりも、むしろ、〈魔物〉と名乗られた方が納得出来る。 「私はれっきとした〈天使〉だよっ!」  自称〈天使〉は、さらに眉を吊り上げ、声を荒らげた。  もしかしてこの女、他人の心の中が読めるのか。 「人の心を透かし見るなんて朝飯前だよ! てか、〈魔物〉だなんてずいぶんな言い方じゃないか! こーんな麗しい容貌を持った魔物がどこにいるってんだいっ? ええっ?」  今にも噛み付きそうに、女は俺に顔をギリギリまで近付けてくる。  俺はベンチに腰かけたまま、それでも、何とか女から逃れようと仰け反った。 「――すいません……」  ここはもう、謝るしかない。  非常に不本意ではあるが、これ以上、女に詰め寄られては堪ったものではない。  俺の謝罪に女は満足したのか、ようやく離れてくれた。  だが、苦虫を噛み潰したような表情に変わりはない。 「とりあえず話を戻そうか」  女は左手を腰に当てた姿勢で、わざとらしく咳払いをひとつした。 「あんたさっき、強く想ってただろ? 『もし、奇跡を起こしてくれるのなら、あの瞬間に戻してほしい』って。  あの瞬間――つまり、昨年の今日だね? そいつの送り主が死んでしまう二時間前」  女は淡々と語ると、俺の手に握られているジッポーに向けて顎をしゃくった。  女の言葉に、俺はもう、いちいち驚くことはなくなった。  天使だろうと魔物だろうと、とにかく、この女は俺の全てを見通している。  現在だけではない、過去のことも全て。 「――俺が、あいつを殺した……」  ジッポーに視線を落としながら、俺は今まで誰にも言えなかった本音を漏らした。  時は、昨年の十二月二十四日に遡る――
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