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女犯

「髪を落としたい、と、おっしゃるのですね」  甘く響く声で、住職が聞き返した。 「はい、亡き一族の菩提を弔う事こそ、私の成すべき事と存じます」  芳子は、座して、平伏し続けた。目を併せる事を、恐れていたのかもしれない。  住職の蠱惑的な眼差しを。女の部分を目覚めさせずにはいられないような声の響きを。 「……わかりました、けれど、今日は日が悪うございます、明日にしましょう」  芳子は、これ以上一晩たりともこの寺に居たくはなかったが、それを住職に言うわけにはいかず、黙って同意する他無かった。 「……はい」  一度も頭をあげる事の無い芳子の頭上に、ひと言だけ、住職の言葉が降った。 「よぉく、お考え下さい、本当にそれでよいか、……ね」  芳子が、一度でも顔をあげて、住職の顔を見ていれば、夜を待たずに寺を出奔していたかもしれない。しかし、芳子は顔をあげなかった。  それは、期待だったのだろうか。  それは、芳子自身が蓋をして、気づかないふりをしていた願望だったのだろうか。 ――  夕刻、やはり、雨は降らない。  住職は、芳子に、明日に備えて身を清めるよう、井戸での水浴びを薦めてきた。  水浴び用にと、用意された白い衣に着替え、水垢離をするように組み上げた水を浴びせかけると、薄い衣が肌に張り付いた。  井戸の水は冷たく、芳子の身体を冷やしてくれた。  肌にすいついた白い衣の下に、芳子の肌が透けている。  井戸水の冷たさに、身体が反応し、わずかな凹凸もわかるほどに、薄衣は芳子の身体を際立たせた。  濡れたまま、芳子は宿坊へ戻った。床に、濡れた足の跡が残るが、すぐに熱気で乾いていく。  坊へ戻り、既に夕闇で薄暗いそこで、衣を脱ごうと手にかけた矢先、手燭を持った住職が現れた。  芳子が、あわてて身体を隠すと、住職は断りも無く部屋へ立ち入り、手燭の明かりを燭台へ移した。 「申し訳ありません、私はこれから衣をあらためますので」  恥ずかしそうに芳子が身体を隠しながら言うと、住職が言った。 「……惜しいですね、とても」  明かりに照らされた住職が、舌なめずりをする姿が見えた。  芳子は、身体を隠しながら、住職と距離をとり続けた。 「お下がりを、こちらへ来ないで」  濡れた衣で、もつれた足が、よろけ、芳子が尻をつくと、住職が芳子の上へのしかかってきた。 「おやめください!」  最後の抵抗と、芳子が身をよじったが、住職の手が、難なく芳子の襟元をかき広げた。  露出された乳房はわななき、震えていたが、既に先端は尖りきっている。 「……このような、美しい身体をして……、惜しいとは思わぬのですか」  住職の言葉こそ柔らかいが、芳子の下肢は住職の身体によって床に縫い止められ、わずかに身をよじることしかできない。 「大声を、出します」  芳子は、怯えている事をさとられまいと、気丈に言ってみせたが、声はわずかに震えていた。 「どうぞ、……誰も来ませんがね、まあ、念の為、ふさいでしまいましょうか」  言うやいなや、住職の唇が芳子の唇を塞いだ。 「ンンッ……!」  住職の力は強く、芳子の唇は蹂躙され続けた。  舌の侵入をさせまいと、引き結んでいた歯は、乳房を荒々しく掴まれた痛みで緩んだ一瞬に、抵抗を無くした。  絡みつく熱のこもった舌の動きは、芳子の知っている男のものとは、忠宗とは違っていた。  忠宗は、このように乱暴では無かった。武士ではあったが、武よりも文を好む性質の忠宗から、激しく求められる事はあったが、このように奪うように侵入される事は無かった。 「……ッ、いッ、やああッ!」  ようやく開放された芳子が叫んでも、住職の手はゆるむ事なく芳子の肌を貪った。  住職の舌が、芳子の首筋を這い、強く吸い付く。肌の上から血を吸い出すような痛みを伴う、それに、芳子がたまらず痛みの声をあげた。 「おやめ下さい、離してッ、離してぇ……」  哀願するような芳子の言葉に、住職はいっそう煽られた。  芳子が気づかぬうちに、芳子の抵抗は、住職の嗜虐心を煽り立てた。  吸い付いた先に残る跡を、所有の証であるように、満足そうに、住職は芳子の肌に吸い付いた。  白い肌に咲いた、薄紅の跡、そして、怯え、震える白い乳房の先端を口に含むと、芳子の抵抗する声に、わずかながらだが、甘いものが混ざってきた。 「やッ、……ダメです、吸わない……でぇ……」  泣いている顔を隠すように、芳子が両手を交差すると、住職の手が、片方の手をとって、床に縫い付ける。  泣いている芳子の顔に、そそられるものを感じた住職は、悦に入って、乳首を唇と指で弄んだ。 「ああッ、いやぁ……」  住職が、舌と指で芳子の乳首を愛撫し続けると、芳子の身体から、力が抜けていく。住職が気が済むまで舐めた芳子の乳房は、唾液でてらてらと光り、抵抗する声に反して、住職の愛撫を求めているように尖り立つ。 「そうでしょうか、あなたは、こうされたかったのでは無いですか?」  芳子の耳元で、住職が囁いた。 「私は知っているのです、昨晩、あなたは、自分で慰めていたでしょう、ほら、こんな風に」  住職が下肢へ指先を差し入れると、既に潤っている場所が、それとわかるように淫らな水音をたてた。 「ちが、違いますッ……」  抵抗する力を失いつつも、芳子は住職の問いかけを否定する。 「そうでしょうか」  住職の指が、今度は芳子の秘所を弄ぶ。 「ンンッ……」  住職の指先の動きに、芳子が快楽に溺れるまいと目を閉じたが、すでに芳子の意志に反して、身体は既に求め始めていた。  住職の手によって、かつての恋人との逢瀬を思い出してしまった身体は、熱を帯び、埋めなくてはならない虚しさともどかしさで、せつなく鳴き始めていた。 「さあ、言って、私が欲しいでしょう?」  住職は、力ずくでは無く、芳子自身に求めさせるように囁いた。 「いいえ、いいえ! 欲しくなどありませんッ!」 「そうでしょうか、こちらは、もう、私の指を締め付けるほどに求めているようですよ」 「私には、愛した方がおります、忠宗様以外に、身体を許すなど、いたしません」  溺れながらも、頑なに男を求めようとしない芳子に、自分の欲望が勝った住職は、自ら『言わせる』事をあきらめた。 「強情ですね、私の負けです」  あきらめたように、住職が一瞬戒めを解いた。芳子は、ほっとして、身体の力を緩めようとした。  ……しかし。 「力ずくで女を犯すのは趣味では無いのですが」  住職は、芳子の足を開き、勢いをつけて、侵入した。 「ひッ!」  唐突な挿入の痛みに、芳子は一瞬顔を歪めた。 「ああ、やはり、もう、とろとろじゃないですか」  乱暴な挿入を、芳子が泣きながら拒んでも、住職は抽送をやめなかった。 「ああ、こんなに締め付けて、……思った通り、あなたのここは、とても具合がいい」 「やめてぇ、お願い、やめて下さい」 「やめる? こんなに喜んで私を受け入れているのに? もう、あきらめなさい、あなたの愛しい人は、海の底、誰も助けは来ないのですから」  住職の言葉に、芳子の心は凍りついた。  心が冷えていくのとは裏腹に、身体は熱を帯び、侵入する男のそれを、締め付け、受け入れていた。  指先では届かなかった、もどかしさを埋めるように、住職は乱暴に芳子を突き入れ続け、そして、中で果てた。  汗ばんだ身体と、ところどころ半乾きになった衣が不快だ、と、思いながらも、心が凍りついた芳子は、身動ぎせずに横たわっていた。  住職に全身をくまなく舐められ、再び貪られても、以降、芳子が声をあげる事は無かった。
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