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第七夜(3)

 レストランを出ていつものホテルへ向かうとき、高見は私の手を掴んだまま黙り込んでいた。  彼が無口になった理由に思い当たるものは二つある。だが、そのうちどれが理由なのかは分からない。もしかしたら、どちらかではなく両方なのかもしれないけれど。そう思ったとき、もしかしたら、火に油を注いでしまったかもしれないと不安になった。  御堂が急にオフィスから出て行こうとしたとき、私は無意識のうちに引き留めようとしていた。それを高見は見ていたわけだし、先ほど彼が話していたように見えていたならば不安を抱いてしまうだろう。だが、それは私と高見が恋愛関係になっているなら、話は分かるがそうではない。それならば彼は何を気にしているんだろう。そしてその燻っていた火に、私が油を注いでしまった。御堂とのことから気を逸らさせそうと誘惑をして。  感情が表情に出ない人間ほど、厄介なものはない。しかもその上無口となると、何を考えているのか分からず不安になる。ただ幸いなことに、繋いだ手を引く力は強くないから、激しい感情を持て余しているわけではなさそうだった。  レストランからホテルまでは、そう大した距離ではない。見慣れたエントランスを通り抜け、エレベーターに乗り込んだ。すると私たちのあとに、数人が入ってきたのだが、ハプニングはその直後に起きた。  エレベーターのドアが閉まったあと、急に高見がしゃがみ込み、靴ひもを結び直した。だが、それを結び終えて立ち上がろうとしたとき、ふしぎな行動に出たのである。手を私のかかとに持ってきたのだ。その直後、突然ふくらはぎに温かいものが触れた。それはまるで肌の上を滑るようにしながら、ふくらはぎをなで上げていく。驚きの余り声を上げてしまいそうになったけれど、慌てて手で口を覆い隠した。すぐに高見を見てみると、彼は澄ました顔で何事も起きてないようなフリをする。それに怒りを感じにらみ付けるが、あえて無視されているような気がした。その間にも彼の手は、ゆっくりと上に向かっている。  スカートの裾をまくり上げながら、その手は太ももに達した。それだけでなく今度はお尻を撫で始めたのだが、高見のいたずらはそれだけにとどまらなかった。  ひとしきりお尻を撫でたあと、次はお尻の合間から指が差し込まれる。尻のあわいから差し込まれたほっそりとした指が、足の付け根をゆっくりと行き来し始めた。どうにか理性が働いて、意識を向かわせないように、指が動くたびに意識が向かいそうになる。それだけでなく、彼の指は敏感な場所を捉え、そこを柔く刺激する。淡い快感がそこからじわじわと伝い、腰から力が抜けていった。どうにか立っているけれど、気を緩めてしまえば今にも倒れてしまいそうだ。  まさか私達以外の人間がいる密室で、痴漢めいた振る舞いをするとは予想していなかった。だから私は驚きと羞恥で、今すぐにでもここから逃げ出したくなっていた。しかし高見の指はそれを許してくれないどころか、更に追い詰めようとする。  柔い刺激を受け続けたそこが、徐々に湿り気を帯びてきた。指で押し上げられたせいで、体からしみ出したものがショーツを濡らしていく。ショーツのクロッチが濡れ始めているのが、はっきりと分かる。そしてあふれ出るものが徐々に増えていることも。羞恥のせいで熱を帯びた体に、一方的に快感を与えられているせいだ。淡い快感も積もり積もれば、淡いといえないものになっていく。それに声を押し殺し耐えているせいで、その快感は倍加していく。それを知った上で高見はこんな振る舞いをしている、そう確信した。  やがてエレベーターが止まり、私たちと一緒に乗っていた人間たちが下りていく。彼らが去ってドアが閉まったあと、ようやくそこから指が引き抜かれた。ほっとしたからか体から力が抜けていった。それまで踏ん張っていた足からも力が抜けてしまい、よろりとふらめいたそのときだった。  隣にいた高見が、いきなり私を壁に押しつけた。覆いかぶさるように迫る高見の体をはねのけようとして腕で押し返そうとしたら、その腕を掴まれ頭上に縫い止められてしまう。目の前に迫る男の顔を見上げると、狡猾そうな笑みを浮かべ、まるで獲物をいたぶるような冷酷なまなざしを向けていた。その表情に恐れを抱き、思わず身震いしたけれど、にらみ付けたが効果などあるわけがない。高見の顔が徐々に近づいてくる。目前で顔を逸らしたら、顎を掴まれ強引に唇を奪われた。  そして次の瞬間、思いがけない出来事が起きた。彼の手がショーツの中に入り込み、すっかり濡れた場所へ差し込まれたのだ。そしてその指先が熱を発し続けていた突起に触れた。それと同時に、もはやぐずぐずに蕩けているところに指を差し込まれ、それまで感じていた怒りと羞恥が圧倒的な快楽に塗り替えられた。
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