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第66話

 やれやれと口に出した萩の言うとおり、翌日にはさらに人が多く集まり、私を一目見ようとやってきた人々を目当てにした商売人が、どこからともなく湧いて出て、別邸の塀の向こうは賑やかで楽しそう。 「私も混ざりたいわね」 「危のうございます」  この騒ぎはきっと、次の満月まで続く。そう思いながら見物の人々に目を向けて、時折笑いかけたりしていると、武藤家の頭領様が別邸の手入れなどを行わせてほしいと望んでいると、警護の男に告げられた。急ぎやってきた別邸の隅々にまで手が行き届かず、庭草も刈ったはいいけれど、そこから先の手入れまでは出来ていないことを、警護の者を通じて知ったのね。 「有りがたく、お受けいたしますと伝えて頂戴」 「姫様!」  驚く萩に、男が去ってから 「観月の宴は、多くの見物の方が来られるはずよ。それらを迎えるための手入れを、行わなければならないでしょう。好意は、下心があったとしても受け取りましょう」 「ですが――」  不安そうな萩をなだめ、武藤家が手配した者たちが別邸の手入れを始めたと知るや、父様を重用してくださる方などが観月の宴の支度を手伝うと次々に申し入れてくれた。それら全てを受け入れれば、こちらが何かを準備する必要も無くなってしまった。  名家とはいっても財力の乏しい曽根家。良家の姫君が思うようなことではないけれど、全てを整えて頂けるのは大助かり。そうやって手入れに入った者たちが、それとなく私の求めるものが何を示すのかを探っているようだけれど、それが何かを知っているのは私と萩の二人のみ。  どんな憶測が飛び交い、どんなものが私の前に差し出されるのかが楽しみだわ。  そう思いながら日々を過ごし、横になると闇から久嗣が不機嫌な顔をしてにじみ出てきた。 「どういうつもりなのさ」  (しとね)の上に座って、久嗣を迎える。目の前に座った久嗣は、不機嫌を隠そうともしない。 「どういうつもりも何も。久嗣が言ったのでしょう? 武藤家の頭領様も納得をするような理由を、考えなくちゃいけないって」 「それが、かぐや姫騒動になってるってこと?」  頷けば、大きなため息をつかれた。 「月のかけら、ねぇ。……それが何か、近貞様に伝えておくよ」
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