50 / 75

第50話

「は――っ、ぁ、あ……あぁ」  細く高い、啜り泣きのような声が口から洩れるのをどうすることもできず、久嗣に背中を支えられたまま、近貞にすがりつく。 「絡み付いて、はぁ――心地よい」 「っ、ぁ――あぁ、あ」  体内で、熱の竜が暴れている。突き上げられるたびに近貞の息は熱く荒くなり、私の声が高まって、天に向かって一つになろうとしていることに、悦びの蜜がとめどなく溢れていく。 「かぐや殿――っ、はぁ、俺を、全て受け止めてくれ」 「ぁあ――ち、かさだ……ぁあ」  涙でぬれた頬に唇が寄せられたとたん 「ぅ、くっ」 「――――っ! あぁあぁあああ!」  体内で弾けたものに、意識が観月の光に散った矢のように爆ぜて、散った。 ◇◆◇  目を開けば、間近に近貞の顔があった。どうして、と思った次の瞬間に思いだし、顔を伏せる。――私、近貞と(ちぎ)ってしまったんだ。  顔中が熱くなり、幸せな心地と恥ずかしい気持ちが湧き上がって体を丸める。 「かぐや殿」  呼ばれても顔を上げられず、ただ丸くなり続ける。抱きしめられて、髪にやわらかなものが触れる感覚があって、耳元でささやくように呼ばれて、髪に口づけられたんだと気付いた。  胸の底からの、幸せそうな息が髪にかかる。目を上げると、額に唇を寄せられた。 「雲の上を行くような、心地だ」  とろけそうな近貞の目に、濡れた綿のようだった気持ちがふわふわとふくらんで浮き上がる。 「――かぐや殿が放った矢が、まっすぐに俺の胸に届いた。……いや、そうであってほしいと思った」  髪を撫でながら、独り言のように近貞が話しはじめる。 「どこの誰かと知った時、知らなければよかったと思う反面、知れてよかったとも思った――武門の我らが朝廷に入り込むには、家格のある姫と通じることが肝要。兄上が求めていたのは、家格があり、朝廷に権力の無い家柄。失礼を承知で言う。曽根殿の姫が、一番良い」
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!