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第46話

 しっかりと私を抱きしめた久嗣は、音も無く滑るように屋敷の中を進んでいく。まるでそれが当たり前のように。武門の男子は、このような歩み方をするのが当然なのかしら。それとも、久嗣が特別なのかしら。――久嗣の言っていた、近貞の陰というのは、どういうことなんだろう。  しっかりと抱き止められているのに、雲に乗って運ばれているような気がしながら、そんなことを考える。ある部屋の前で止まった久嗣が 「近貞様」  私を下しながら声をかけると、入れと近貞の声が聞こえた。はっとして身を固くすれば、片目を閉じながら人差し指を口元に当てた久嗣が、するりと中へ入る。何事かを話している気配はあるのに、聞こえない。しばらくそのまま、ただ座って待っていると足音が近づき、手を掴まれて部屋の中に引きこまれた。  驚きのあまりに声も出せずに抱き止められ、目の前に近貞が座っていることに驚きが増した。近貞も、目も口も大きく開いて私を見ている。 「じゃあ、このまま俺様がもらったとしても、平気なんだよね」  背後から胸元へ、腕が差しこまれた。 「二人は、恋仲であったのか」 「そういうことじゃないって、言っているだろ」 「ぁうっ」  強く乳房を掴まれて、痛みに声が出た。そのままグニグニと揉みしだかれて、身を捩らせて暴れようとする耳元に 「おとなしくしてて」  囁かれた。その声が聞いたことが無いくらいに優しくて、動きを止める。 「こういうものは、愛だの恋だのだけじゃないことくらい、知っているだろ。――――政略のために行われるんだって、そうするんだって教わってきただろ」 「それは、久嗣には無用の事だろう」 「――は、ぁ」  耳の裏を舐められて、胸の尖りを(つま)まれて、喉から洩れた自分の高い声にこわばる。ざわざわとして、くすぐったいのとは違う――けれどよく似た感覚は、あの夜に久嗣が触れてきたときに感じたものよりもずっと、甘い。  ――どうして。  疑問を浮かべたと同時に、近貞と目が合った。久嗣の、もう一本の手が膝を撫でて内腿を割り、誰に触れられることも無かった茂みの奥の谷へ、触れる。 「っ、ふ、ぁん」
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