38 / 75

第38話

 その光に照らされた文を開けば、近貞の文字が表れた。  ――ああ。  胸が、震えた。指先まで、震えている。  ――――  かぐや殿  具合が悪いと、人づてに耳にした。  お互いの素性を隠したままでいることで、堂々と見舞えぬ身が歯がゆい。  別邸の警護の中に、久嗣を交えさせていただいた。  俺に力になれることがあれば、なんでも久嗣を通して伝えてほしい。  近貞  ――――  そっけない文面が、なつかしく感じられる。ほんのりと唇に、笑みが浮かんだ。近貞(ちかさだ)が、私を気にかけてくれている。私を気にかけ、久嗣をこちらへ置いてくれた。  手紙を胸に抱き、近貞の気持ちを噛みしめる。胸があたたかくなって、近貞の元へ飛んで行けそうなほどに心が軽くなった。 「近貞に、会いたい」  ぽろりと、こぼれた。  自分の言葉で、近貞に会いたい気持ちがどんどんと膨らんでいく。 「近貞に、会いたいの」  久嗣に顔を向ければ、じっと見つめられた。瞳を覗き込まれ、心の奥まで覗き見られているのだと感じたけれど、近貞に会いたい気持ちに嘘も偽りもない。  だから、まっすぐに見返した。  しばらく見つめ合った後、諦めたように、あきれたように息を吐いた久嗣が立ち上がった。 「気の病には、気分を変えることも必要だろうし、何より陰陽師が清涼な野山の空気に浸れとかなんか、そんなようなことを言ったんだってね」  それは、私に話しかけているようにも、久嗣自身に話しかけているようにも聞こえた。 「俺様たちを統率する人も、必要だよなぁ」  頭の後ろで手を組んだ久嗣が、ちらっと私を見て子どものように笑った。 「その言葉、そっくりそのまま返書の代わりに持って帰るよ」  言うが早いか、闇の中に溶けてしまった久嗣の言葉を胸中で繰り返す。最初の言葉は、何を意味しているんだろう。何を、するつもりなんだろう。統率する人も必要って……。私が近貞に会いたいと言った言葉を受けての、その発言だとしたら、近貞が警護の顔ぶれに、混ざると言う事?
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!