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第20話

 それに、私にはとってはとても魅力的な内容だし、と心の中で付け加える。  あの瞬間、確かに私と近貞は一つになっていた。――そのことが、胸の奥を震わせている。小さな震えはずっととどまっていて、あたたかなものを生み出し、体中に広げていく。ふわふわとして心地よいそれを空に舞い上がらせるように、そっと息を吹き付けるように吐息を漏らすと、ふうんと不思議そうな顔で久嗣が言った。 「ま、かぐやちゃんも色気も素っ気もない文を返しているし。二人にはそれが、丁度いいのかもな」  飾るなんて若様のガラじゃ無いしね、とつぶやきながら久嗣は紙を取り出す。私の部屋に置いてあるものを使い続ければ、いつか無くなってしまう。紙が無くなったと言えば、何処に文を出したのかと問われるかもしれない。そうなれば秘密のやりとりが出来なくなるでしょう、と久嗣が気の付く自分は偉いだなんだと自画自賛しながら言ってきて、なるほどそうねと同意してから、用意をされた紙に返書をしたためる事になった。  紙を受けとり、文机に向かう。さて、と筆を取り宛名を書いて、手が止まった。  ――どうしよう。  素直に、あの時に呼吸を合わせられたことが、自然と合わせてしまったことが私一人の思い込みではなくてうれしいと、書いてしまったらどうなるんだろう。近貞は、そういうことには一切頓着をしないかもしれない。ただ、やはりそうだったかと私のように頷くだけなのかもしれない。  ――私のように?  うれしくて、心がふわふわとしている。それを、近貞も感じてくれるのだろうか。共に喜びあうだけで、それだけですべてが終わってしまうのだろうか。  ――ほんのわずかにも。  私を姫として想うことは、無いのだろうか。 「どうしたの?」  やわらかな声に、顔を上げる。おや、と眉を持ち上げた久嗣の目に、情けない顔をしている私が映っている。包み込むような顔をして、久嗣が私の頬に触れた。 「どうしたの?」  同じ問いを繰り返されて、どうもないと言えなくて、でも何と言えばいいのかがわからなくて、私はただ、捨てられる前の子どものような顔をしている、久嗣の目の中にいる自分を見つめた。  どうして私、近貞に姫として想われたいと望んでいるの――? 「そんな顔をしていると、悪い鬼に食べられちゃうよ」
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