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第7話

 ――は?  にこにことする近貞様は、本気で私が誰かを知らずにさらったと、問うまでもなく全身で告げてくる。 「私が誰でも、かまわないのではないのです?」  呆れつつ、皮肉を込めて言えば 「それも、そうだな」  こだわり無く言われた。何を考えているの――? 「あの、近貞様――?」 「近貞でいい」 「では、近貞。何を思って私を宴の席より、ここまで運んだのですか」  うむ、と深く頷いてから 「話を、しようと思ってな」  大きく丸い瞳を閉じるほどに細めて言う近貞には、何の含みも感じられない。子どもが大人の体になってしまったようで、警戒も緊張もばかばかしくなってしまった。 「話って、何の?」 「先ほど、月を射抜いておったろう」  見られていたのか――。 「あまりにも、見事な月でしたので」 「俺も、射抜いた」 「まぁ」  同じ笑みが、二人の間に湧き起こった。なんだか古くからずっと一緒に過ごしてきた間柄のように感じられて、私は落ち着いて座り直し、まっすぐに近貞に顔を向ける。 「弓を、なさるのですね」 「武門の男だからな」  なるほど。この屋敷に部屋があるということは、武藤家の家臣か何かかしら。ちらと見た限りでは、質素なしつらえだし。それでも奥の部屋を与えられているのだから、よくよく重用されている――という所かしらね。 「かぐや殿は、弓をよくなさるのか」 「かぐや――?」 「その、お名がわからぬゆえ、月下にあった姫といえば、かぐや姫しか思い至りませなんだ」  少し恥ずかしそうにするのが、可愛らしい。よくよく見れば、同じくらいの年ごろなような気がするけれど、所作や表情から考えると年下っぽくもあって、よくわからない。
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