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第3話

 世間的には、私はそろそろ誰かと結婚をするのが良い年頃なんでしょうけど、父様はそういうことに疎いみたいで、私がこれぞと思った人がいれば、と言い続けてる。私も、別に誰かの妻にならなきゃいけないなんて思ってもいないものだから、のんびりゆったり過ごしているんだけど、周囲が放っておいてくれないのよね。  まぁ、仕方が無いことなんだけど。  こうして退屈きわまりない宴に出るのも、家名を背負った仕事の一つと割り切って、せっせと送られてくる招待状に誘われるまま、駕篭に乗せられ私は出かける。家の中でじっとしているよりも、面白いものが見つかる時もあるし。それに 「こちらを、お召し上がりになりませんか」  珍しかな菓子を、こうして差し出してもらえるんだから。 「ありがとう」  花の形を模した菓子を手にして、口をつける。ああ――。 「美味しい」 「お気に召されたのであれば、良かった」  落ちぶれ貴族の家計では、こういう嗜好品に回す余裕なんてないんだもの。ああ、でも本当に美味しい。見た目も可愛いし。これ、萩に――私付の#女房__にょぼう__#に持って帰ってあげたいなぁ。 「あの――」 「はい」  おずおずと、恥ずかしげに目を上げてみれば、さわやかの見本のような笑みを返された。 「この愛らしい花を、家中の者にも楽しませたく思うのですけれど…………」 「朔の君は、お優しいのですね」  ゆるくかぶりを振ってみせると、懐紙を取り出した公達は菓子を包んで私の手を取り、乗せてくれた。  さりげなく手を握るとは、なかなかやるな。なんて、穿った考え方かしら。 「この花を与えられる人が、どんな方なのか見てみたいな」  おっと。それは私の屋敷に来たいということね。 「姉のような、妹のようなものでございます」 「それは、ますますお会いしたくなった」  そっと顔を近づけて耳元で 「貴女の名と同じ夜に、忍んでもかまいませんか」  私の名前と同じ夜――つまり、次の新月に私の部屋に忍び込んで朝まで男女の語らいをしたいっていう誘いに、あいまいな笑みを浮かべて手渡された菓子の包を持ち上げた。
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