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良い猫には良い鼠

 彼は私を抱き上げて、膝の上に乗せたあと、何をするわけでもなく黙り込んでいた。ほのかに明るいライトに照らされた彼の表情はとても穏やかで、乱れた長い前髪の隙間から覗く目は私をじっと見つめている。ただ見つめられているだけなのに、どうしようもなく落ち着かないのは、長い時間をかけたキスのせいかもしれない。現に太い腿をまたいでいるところが、いまだじくじくと疼いたままになっている。熱っぽいまなざしを向けられて、落ち着かない気分をどうにか抑え込んで見つめ返していると、彼が静かに口を開いた。 「キス、して。みずき」 「キス?」  聞き返すと、彼が私を見つめながら頷いた。 「俺に自信を頂戴」 「自信? なんの?」  すると彼が真面目な顔をした。 「みずきは俺のこと、好き?」 「うん、好きだよ。康平さんは?」 「俺はみずきのことが好きだよ。だから自信を頂戴。みずきに愛されているんだっていう自信が。それがあれば、きっと乗り越えられると思うから」  真剣なまなざしを向けられたとき、すぐに分かった。彼も私と同様何かを抱えていると。でもそれが何なのか分からない。だってふだんの彼は、そういったものとは関わりがないように見えるから。  でも私だって、ふだんは苦い思い出を見ないようにしながら生きている。ふとしたときにそれを思い出し、後ろを振り返ってしまうけど。もしかしたら、彼もまたそのようなものを抱えているのかもしれない。私のキスでそれを乗り越えられるなら、何度でもキスしてあげたい。彼が好きだから。  それまで熱っぽく私を見つめていた瞳が、次第に陰りを帯びてきた。そして寂しそうな表情へと変わっていった。それを目にしたとき、急に胸が痛くなって、勝手に体が動き出す。見上げる彼の頬に両手を添えて持ち上げると、わずかに開いた唇に口づけた。どうか彼に自信を与えてくださいと願いながら。  するとそれまでお尻を抱えていた手が動き出した。それと同時に彼の舌がすると入り込んできて、私の舌に絡み付いてくる。動き出した手は、するすると滑るように背中にたどりつき、なにやらもぞもぞとし始めた。それまで胸を押さえ付けていたものが取り除かれて、その上ベビードールまで取り払われた。温かくて大きな手が胸をすくい上げ、感触を確かめるようにやわやわと揉みしだく。  そこから先はあっという間だった。彼の大きな手が、私の体を優しく撫でるたび、その心地よさに声を漏らしていた。そしてたっぷり時間を掛けていたキスが終わりを告げる。首筋に吸い付いた唇は、胸元へとおりてきて、鎖骨へとたどり着いた。浮き出た鎖骨に何度もキスされたあと、そこを軽く噛まれて思わず声を詰まらせると、慰撫するかのように舐められた。  肌を這う舌の動きに気を取られているうちに、彼はいたずらをしかけてきた。背中に添えられていたはずの手が、いつの間にかタンガの脇にあるリボンにたどり着いている。それに気がつき、どうにか逃げようと腰を浮かせようとしたが、背中に残されていた手に阻まれた。そしてリボンを解かれて、役目を終えた手が背中を支えると同時に、もう片方のリボンも解かれてしまう。 「ぬあっ!?」  リボンが緩んだ瞬間つい声を出していた。だが彼は素知らぬふりで、お尻をなで回している。そればかりかお尻のあいだにすっと手を差し込んできた。それから逃げようとして腰を浮かせるが、がしっと押さえ付けられてしまう。そしてすりすりと尻のあわいを上下に撫でながら、太い指がそこへと迫ってきたものだから、恐々となりながら彼に呼びかけた。 「こ、こうへい、さん?」  彼のがっしりした肩を掴みながら尋ねるが、彼は私の胸に顔を埋めたまま黙り込んでいる。 「いっ、いま、なにを、しようと、しているんでしょうか……」  だが、なんの反応もない。 「おっ、お尻に指、ぐあっ!」  イチャイチャしている場面にそぐわない変な声が出た。彼の指がなんの前触れもなく、そこに触れたせいだ。しかも触れただけでなく、指でそこをむにむにと揉み始めている。誰にも触らせたことがない場所を、まるで解すように揉まれているうちに、奇妙な感覚に陥った。恥ずかしいはずなのに、もっとそうしてほしい。そこを揉みほぐしている指の動きを追いかけていると、それまで胸の谷間に顔を埋めていた彼が、いきなり先端に吸い付いた。熱くぬめった感触がそこから伝い、またまた変な声を漏らしてしまう。 「んきゃっ!?」  すると同じタイミングで指がゆっくりと差し込まれた。背が勝手にのけぞる。そして腰からすうっと力が抜けていった。彼は私の背中をわずかに倒し、音を立てながら胸のとがりに吸い付いている。ぴんと張り詰めた皮膚の表面を、熱い舌で転がされるたび、ざらざらとした感触にぞくぞくと震えが走った。  舌で突かれ転がされ、唇に挟まれたまま歯で軽くしごかれているうちに、お尻をいじる指の動きに併せて腰が勝手に揺れ動く。体の中に籠もったままの熱が急速に膨れ上がってきた。その熱は理性も思考もいともたやすく溶かしてしまう。そして私は、熱のせいで息苦しさを感じながら、彼の名前を呼び続けていた。
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