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食べるほど食欲がでる

「さて、と。明日俺はロンドンへ経つし、幸いなことに明日は土曜日でお前は休み、っと」  そう言って彼は、私を軽々と抱き上げた。ひょいと抱き上げられてしまい、目線が急に高くなったというのに、私はいまそれらに驚いてなどいられない状態だった。なにせ突然彼が謎の行動に出たからだ。 『日頃俺がどれだけ我慢しているか、たっぷり教えてやろうか? 特に昨日なんか、まるで修行僧にでもなった気分だったぞ』  そう言いながら、にやりと悪い笑みを浮かべた彼の真意が分からない。しかもこれから何が起こるか予想できないものだから、私はただただうろたえていた。そうこうしている間に、いつの間にかベッドに運ばれていた。ぎしりとマットレスが軋む。仰向けに寝かせられた私のすぐ横に、彼は肘をつきながら横たわった。彼の顔を見るが、影になってよく分からない。  彼の手がベビードールのリボンに伸びた。端をつまんで持ち上げると、するりとリボンがほどけてしまい、セクシーなブラがあらわにされる。それに気づいて両腕で胸を隠そうとしたが、その手を掴んだ彼がのしかかってきた。両脚のあいだに彼の足が差し込まれ、有無を言わさず入り込んできた。 「あともうちょっと我慢すればいいのに。情けねえなあ、俺」  息を吐き出しながら、彼が甘えるように額をくっつけてきた。そして柔らかく唇が重ねられる。彼の弾力のある唇が、小さな弧を描きながら唇の表面を撫でた。 「ん……」  唇をやんわりと食まれ引っ張られたとき、思わず声が漏れた。音を立てながら彼が唇をついばみ始める。何度も何度も優しくついばまれ、そうされているうちに体が火照ってきた。すると彼が唇を離す。温かく湿った息が唇に掛かったとき、まるでそこが性感帯になったかのように、唇がじんじんと疼いた。 「こんな時に言うことじゃないけれど、俺、来月からこっちにずっといるから」 「ふぇ?」  口がうまく回らない状態で応えると、彼が再びキスしはじめた。こんなキス初めてだ。まだ舌も入れてないのに、体が火照るだけでなく、触れた唇がその存在を誇示するかのよう疼き出す。そして今までのキスが、とたんに色あせていった。と言っても、それまでのキスはセックスするときの挨拶みたいなものだったけど。  過去の恋人たちとしたキスは、唇同士が触れたらすぐに舌を絡め合うものだった。だけど康平さんとのキスは一度目はそうだったけれど、今夜のそれはとにかく優しかった。まるで心の扉を優しくノックするように触れてくれるから、その心地よさに酔いそうになっていた。  やがて表面だけを触れるキスに焦れったさを感じ始めたころ、湿り気を帯びた唇をつんつんと突かれた。突いたものはざらりとしていて、その上ヌルヌルと濡れている。そしてそれは唇を数度突いたあと、ゆっくりと表面をなぞり始めた。熱い舌が唇を這う動きがどうにも焦れったく、もどかしさばかりが募ってくる。舌はそれでも、執拗なまでにそれを繰り返し、私を追い詰めた。 「は……っ。はや、く……っ」  乱れた息を吐きながら、どうにか訴えると、唇をなぞっていた舌がぴたりと止まった。そして再び唇が重なって、ゆっくりと弧を描く。その動きに合わせて濡れたところから、粘りけのある音がした。まだキスしかしていないのに。まだ触れられてもいないのに。まだ彼を受け入れていないのに、なんでこんなに苦しくて切なくて、そして淫らな気分になるのだろう。  彼の体を挟み込んでいる両脚が、勝手にもじもじと動いた。レースに覆われたところがじくじくと疼きだし、しかもどんどんひどくなっていく。早くそこに触れて欲しくてたまらない。だけどそれを言葉になんかできなくて、そうしている間にももどかしさは募るばかり。  キスをされているだけなのに、しかも触れるだけのキスで、息が苦しくなっていた。だが彼はいつまで経っても、それをやめようとしない。思うようにならないことが苦しくて、ついには子供のように泣きじゃくっていた。すると彼が唇を離し、宥めるようにまぶたや鼻にキスをする。そして再び唇を塞いだ。  舌が触れたと思ったら、唇のあいまからそれがするりと入り込んできた。出迎えるように舌を伸ばすと、口付けがより深くなり、互いに舌を絡ませた。重ねた唇のあいまから漏れる息づかいが、徐々に荒々しいものへなってきて、覆い被さる彼の体が熱くなってきた。それまで私の腕を押さえ付けていた手が離れ、彼の腰を挟み込んでいた腿を撫で始めると、そこからぞくぞくとした震えが走り、たまりかねて声を漏らす。するとそれまで腿を撫でていた手が、ゆっくりと上がり、くびれのあたりを撫で始めた。そして予想外の出来事が起きる。 「体、起こすぞ」 「ふぁ……?」  ろれつの回らなくなった口で応えると、彼は腕を腰に回したあと、体を支えながら私の体を持ち上げた。私は驚きながら彼の首にしがみつく。急な出来事のおかげで、それまでぼんやりとしていた頭が働き出したはいいが、これから何が起こるか分からない。私は彼の腰をまたいだまま、彼の次の行動を待った。
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