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第57話

 八重子と付き合うと言いふらしていた義英は、手のひらを返したように「あんな田舎くさい女を、本気で相手にするわけが無い」と言い出して、女性人気は一気に下降。サークルに顔を出さなくなった。  好奇の目にさらされながらも、八重子は幸せな日々を過ごしていた。時には美優、時には優斗となる恋人と過ごす時間は新鮮で、幸福に満ち満ちていた。  学祭の日を迎え、八重子は優斗に見せたいものがあると告げられた。どうして礼司と親しげにしていたのか、その理由を教えると言われた八重子は、ワクワクしながら優斗に手を引かれ、サークルの作品展自室の前で目を丸くした。 「ここ?」 「そう、ここ」  展示の準備は男子だけでやると言われ、理由がわからぬままに八重子らは作品を預け、設置には係わらなかった。なので、皆の作品を目にするのは、これがはじめてだ。 「入って」  導かれて足を踏み入れた八重子は、見学者の一番多い展示へと連れて行かれ、そこにある絵画を目にして動きを止めた。  こぼれそうなほど開いた八重子の目には、白い布を纏った半裸の人物が映っていた。肌身をさらす上半身は、性別の差を現す第二次成長を迎える前の女性のようだ。けれど人物の顔はあどけない子どものものではなく、しっかりと大人の線を描いている。  八重子はモデルが優斗であると、すぐに気付いた。見学をしている人々も、現れた優斗を見て、彼がモデルだと気付いたようだ。ひそひそとした声があちらこちから上がり、八重子の耳をくすぐる。 「驚いた?」  八重子は吸い込まれるように絵を見つめたまま、頷いた。 「これを、描いてもらっていたんだ」 「え」 「石渡先輩に、モデルにしてほしいって頼んで。多分、八重ちゃんが見たのは、構図が決まったって言われたか、描く場所を確保できたって言われたかした時だと思う。仕上がるまで、誰にも知られないようにしたいって頼んだから」 「……どうして」
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