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第53話

 指先で空中に文字を書いた優斗に、八重子はクスリと鼻を鳴らした。優斗が照れくさそうに呟く。 「単純だよね」 「わかりやすくて、いいと思うよ」  クスクスと笑い合う唇が、引き寄せられて静かに重なる。八重子の気持ちを探るような口付けに、八重子の心がくすぐられた。やがて唇が離れ、八重子の顎や頬、耳朶や首にキスが落ちる。緊張をごまかすために、八重子は美優の髪に触れた。 「やっぱりまだ、信じられない」 「男だってこと?」  八重子がはにかみながら頷けば、優斗が八重子の手を取り下肢に導いた。なまなましく熱く硬いものを握らされ、八重子ははじめ、それが何かがわからなかった。 「証拠」  恥ずかしそうに優斗がつぶやき、それが“彼女”ではなく“彼”であることを示すものだと気付いた八重子は、驚いて手を引いた。 「怖い?」  八重子はあわてて首を振る。 「びっくりしただけ」 「いつもは、こんなじゃないんだよ。八重ちゃんと、こうしているから熱くなってる」 「美優ちゃん」 「優斗」 「優斗……くん」  指先で唇を押されて咎められ、八重子は赤くなった。いつでもその声と微笑み、指先にドキリとしてきた。きっともう、ずっと前から恋に落ちていたんだと思う。 「デートの時、スカートだったのは、こんな風になってもごまかせるから、だったんだよ」  情けない顔で、優斗が八重子にキスをする。八重子が疑問を瞳に乗せれば、優斗の唇が耳に触れた。 「好きな子とのデートなんて、興奮しちゃうに決まってるから」  好きな子、という単語に、八重子の心臓が跳ねる。それと同時に、腰の辺りがじわりと熱くなった。 「っ」
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