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第48話

 女子大生ではない、という事はどういう事だろうと、八重子は考える。いつかのテレビドラマで、大学生にあこがれて、生徒のふりをし講義に出ているという役があった。美優もそうなのだろうかと、八重子は美優が続きを話すのを待った。 「最初、困ってる感じがしたから、八重ちゃんに声をかけたの。ほっとけないなぁって思って」  美優は自分が何者かを話さずに、八重子と出会った頃の話をしはじめた。その先に美優の言いたい事が待っている。告白をする準備をしているのだと、八重子は黙って耳を傾けた。 「ほっとした顔されて、すごくうれしくなって。頼られるのが楽しくて。きっと、ずっとこうして過ごすんだろうなって、なんとなく感じてた」  八重子は驚いた。美優に頼るばかりの自分に、あきれられていると思っていたから。 「でも、八重ちゃん、一人でサークルの活動に顔を出そうとしたりして。……頼りきりじゃ悪いからって、がんばってる姿を見て、すごく寂しくなったの」 「美優ちゃん」  八重子はそっと美優の手を握った。礼を言うように、ほのかに目元を和らげた美優が続ける。 「ずっと同じなんて、そんな事は無いんだって。八重ちゃんは石渡先輩が好きで、前に出ようとしているんだって。そう考えて……そうしたら」  ぽろりと美優の目から涙がこぼれた。励ますように、八重子は美優の手を両手で包む。美優は泣きながら、震える声で謝罪するように、気持ちを吐き出した。 「すごく悔しかったの」 「……悔しい?」  頷き、嗚咽を必死に堪えようと震える美優を、八重子は両手を伸ばして抱きしめた。こんなふうに、美優が頼りなく泣き出す姿など、想像をしたことも無い。彼女はいつも、八重子にとって、太陽のようなキラキラと明るくあたたかな存在だった。  でも、と八重子は美優の涙を受け止める。  美優も同じ人間なのだから、心の中に色々と抱えているのも当然だろうなと。  八重子は美優を抱きしめる手に力を込めた。 「ゆっくりでいいから、美優ちゃんの事を教えて。私、もっと美優ちゃんを知りたい」  八重子が耳元でささやけば、美優が泣き顔を八重子の頬に擦り寄せた。
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