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第47話

「どうして?」 「こんなのしたって、美優ちゃんと同じになんてなれないから」 「取ろうとしたの?」  こくんと八重子が首を動かせば、バカだなぁと美優が八重子の指に唇を寄せた。 「痛かったでしょ」  八重子は首を振る。指の痛みは、胸の痛みの強さに消されていた。八重子の否定をどう受け取ったのか、美優はふたたび八重子の指に唇を当て、次には懺悔するように額を重ねた。 「私のほうが、八重ちゃんに酷い事をしてきたのに」  搾り出すような美優の声に、八重子は首を振った。 「美優ちゃんは、いつも私を助けてくれた。酷い事なんて、なんにもされてないよ」 「してるんだ」  美優の声はいつもの柔らかなものではなく、思い詰めたように硬かった。八重子は声音に潜む激しさに瞠目した。 「ずっと、八重ちゃんを騙してた」  美優の言葉の意味が、八重子には理解できなかった。ゆっくりと顔を上げた美優が、力無く微笑む。その目に苦痛がきらめいて、八重子は言葉の先を聞くのが怖くなった。 「美優ちゃ……」 「八重ちゃん」  八重子の声を遮るように、美優が強く被せる。 「さっき、女の子とか関係なくて、私が私だからって言ってくれたよね」  美優の声はしっかりしているのに、顔は部屋を訪れたときよりも青ざめている。思い詰め、覚悟を決めた瞳に、八重子は自分の姿を見た。美優も自分と同じように、言わなくてはならない事を抱えているんだと、八重子は気付いた。それを聞いて、受け止めなければならないと、八重子は気持ちを引きしめる。 「うん」  八重子が力強く肯定すれば、美優は弱々しく、実はねと呟く。 「……女子大生じゃないんだ。私」 「え」
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