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第46話
「そんなんじゃないって、思っても思っても、消えなかったの。消えるどころか、そうなんだって自分に思い知らされた。……私ね、美優ちゃん。美優ちゃんの一番になりたいんだ。石渡先輩に憧れていたのは、先輩と美優ちゃんなら、きっと似合いだろうなって感じたから。そう、気付いたの。ネイルをしてみたのも、美優ちゃんを取られるんじゃないかって思ったから。……おそろいのネイルをしたからって、美優ちゃんを独り占めできるわけじゃないのに」
ばかだよね、と言外に漂わせ、八重子は口の端をゆがめた。涙が次々と流れ落ちる。胸が軋み、涙となった想いが溢れて止まらない。八重子は胸に当てていた拳で、目を被った。
「美優ちゃんが好きなの」
友達じゃいられないほどに。
「女の子なのに……変だって思った。友達としてなんだって、何度も言い聞かせたの。でも、違うの。女の子とか、そういうの関係なくて…………美優ちゃんが美優ちゃんだから、私、私」
そこから先は、言葉にならなかった。漏れる嗚咽を堪えたくて、八重子は必死に気持ちを宥めようとした。けれどそれは成功せずに、涙はどんどん湧き上がってくる。
「ごめんね、ごめん」
「八重ちゃん」
思うよりも近くで美優の声がしたかと思えば、八重子はそっと抱きしめられた。
「ありがとう」
それが断りの言葉に聞こえて、八重子の心臓は潰れてしまいそうだった。
八重子が首を振って返事とすれば、美優は八重子の手を握り、小さな子どもをあやすようにささやいた。
「顔を上げて、八重ちゃん」
八重子が幼子のようにいやいやをすると、美優は同じ言葉を繰り返す。
「お願い」
静かで力強い音に、八重子はゆっくりと顔を上げた。目の前には苦しそうな顔で微笑む美優がいて、自分の告白が彼女にこんな顔をさせてしまったんだと、八重子は新たな涙を滲ませた。
「手、真っ赤になってる」
美優の指が、八重子の指を愛撫する。
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