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第45話

「私が、石渡先輩と付き合っているかもしれないと思って。それで、返事をくれなかったの?」  労わるような美優の気配に、八重子は口を硬く結んだ。礼司に声をかけられ、はにかむ美優が意識に上る。じわりと、目頭が熱くなった。 「美優ちゃんに嫌われてもいいと思ったの。ちゃんと告白しようって決めて、来て欲しいって言ったの」 「八重ちゃん、私――」 「聞いて、美優ちゃん」  顔を上げた八重子の必死な様子に、美優は息を呑んだ。今にもこぼれそうなほど、涙をためた八重子の視界に映る美優が、ゆがんで滲む。 「私、すごくずるくて酷い人間だって、わかったの。美優ちゃんに電話して、繋がらなくて、その時に気付いたの。――あのね、美優ちゃん。柏木先輩が、女の子が努力してオシャレするのは、男の人に見てもらいたいからだって言ったの。私、その時に美優ちゃんを思い出したんだ。美優ちゃんなら、なんて言うかなって思って。そうしたら、自分のためっていう答えが出てきたの」  八重子は宝物のように、美優とおそろいのネイルをしている指を、胸に押し当てた。 「石渡先輩に、美優ちゃんが私に見せた事もないような笑顔を向けた時、嫉妬したんだ。そしてとっても悲しくなった。それはね、石渡先輩に憧れているからじゃなくって、美優ちゃんを取られた気になったからなの」  自分の心の中を確かめるように、八重子は胸に手を当てて、祈るように目を閉じて言葉を紡ぐ。溜まった涙が頬を伝った。 「私、大学に行ったら、美優ちゃんみたいに、オシャレでかっこいい、都会っぽい人になるんだって思ってた。……でも、実際は何も変わってない。変わろうとしなかった。変わるのがね、怖かったの。だって、情けなくて頼りない、今の私のままじゃないと、美優ちゃんが構ってくれないと思ったから。――ずるいよね。すごく、ひどい人間だよね。美優ちゃんに甘えて、頼って、そればっかりで」 「八重ちゃん」
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