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第26話

 声を弾ませる美優が指を伸ばす。すらりとした長い指を飾る輝きは美しく、八重子の丸い爪には似合いそうに無かった。そう思いながら、八重子も指を伸ばして美優の手の横に添える。 「美優ちゃんの指、すらっとしてていいなぁ」 「私は、八重ちゃんの指、好きだよ」  曖昧な笑みで八重子が「ありがとう」と呟くと、美優の指が八重子の指に絡んだ。 「こんなふうに装飾しなくても、このままで十分かわいいよ」  それは、と言いかけた八重子は、開いた唇を閉じた。ふいに、努力してオシャレしてる子はかわいいと言っていた、義英の言葉が浮かぶ。それと重なり、礼司に話しかけられていた美優の姿が思い起こされた。  はにかむような、八重子には見せた事のない、うれしげな美優の笑顔。 「でも、やっぱりうらやましいよ」  力無い八重子の笑みに、美優が案じ顔になる。ぎゅっと強く手を握られて、八重子は心までも美優に握られたような心地がした。それは悔しくて情けなくて、やさしく切ない痛みを伴っている。その痛みが自分をみじめに思わせるのに、八重子は美優の手を振りほどけなかった。 「じゃあ、試してみればいいよ」  力づけるような美優の声に、八重子はそっと目を上げる。励ます瞳で、美優は微笑んでいた。 「木曜の午後、講義の後って暇かな。ネイルサロン、一緒に行こう」  八重子は左右に視線を彷徨わせた。本気でネイルをしたいと思ったわけではない。ほんの少し、興味があっただけだ。迷う目を美優に戻せば、労わるような光があった。そんな目をされる自分が、美優の友人であるはずはない。華やかな美優と地味な自分が、友達であれるはずがない。  八重子の劣等感が疼く。  けれど、と流されるまま生きてきた、変われるかもしれないと思い続けて、誰かが自分を変えてくれる事を待ち続けていた部分が訴える。美優と一緒にネイルサロンに行き、化粧をし、彼女に服を選んで貰ったら。そうすれば、美優の隣にいても劣等感を覚えずにいられるかもしれない。  彼女の隣にいても、自然に見える人になれるのではないか。
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