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第21話

 さっと立ち上がった義英が、ありがとなと八重子の頭に軽く手を置く。小さな子どもにするような仕草に、八重子は自分がまだ幼子であるような気がした。それと同時に、義英に甘えてもいいぞと言われたようで、むずむずと座り心地が悪くなる。  この人は、誰にでもこんな事をするのだろうか。  深い息を吐いて気を取り直した八重子は、本を開いて目を落とした。  けれど内容が頭の中に入って来ない。情景がちっとも脳裏に浮かばなくて、八重子は何度も文字を視線でなぞった。  そうしているうちに時間が経ったらしく、美優の「八重ちゃん」と呼ぶ声が耳に届いて、八重子はほっとしながら目を上げた。 「美優ちゃん」  安堵が色濃く声に出て、八重子は自分が相当に動揺をしていたのだと気付く。 「何かあった?」  八重子が立ち上がれば、美優が首を傾げる。 「ううん。なんでもない」 「ほんとに?」 「うん、その……美優ちゃんがスカート穿いてるの、珍しいなぁって」 「ああ、これ」  義英に与えられた動揺を、八重子はとっさに美優のスカート姿への驚きだとごまかした。ふんわりとしたミニスカートの端をつまんだ美優に、八重子は首を縦に動かす。 「いつも細身のパンツだから、ちょっとビックリしちゃった」  すると美優がイタズラっぽい顔で、片目をつぶった。 「八重ちゃんとのデートだから、かわいくして来たんだ」 「えっ」 「大好きな子とのデートは、うんとかわいくしたくなるでしょ」 「大好きって」  八重子の顔に熱が上る。 「かわいい?」  少し不安そうな美優に、八重子は力強く肯定した。 「すっごくかわいい」  美優がとびっきりの笑顔になって、八重子の胸はふわふわとあたたまる。
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