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第17話

 かろうじて喉の奥に留めた言葉に情けなくなり、八重子はうつむいた。 「地味って何?」 「え」  目だけを上げれば、美優が怖い顔をしていた。何か怒らせるような事を言ってしまったのだろうか。喉元で止めたと思った言葉は、こぼれてしまっていたのだろうか。 「ちょっとまって」  怒りを静めるように、目を閉じて深呼吸をした美優が、スマートフォンを取り出して指を滑らせ、なるほどねと呟く。 「何が、なるほどなの?」 「地味って意味」 「え」 「調べたの」  ほら、と美優に画面を見せられて、八重子は困惑した。 「意味ぐらい、知ってるよ」 「本当に?」  美優は何を言いたいのだろうかと、八重子は疑問を浮かべつつ頷いた。すると美優が、ふふんと薄い胸をそらして画面の中の文字を読む。 「飾り気が無く、控えめな事」 「だから、知ってるって」  自分にぴったりの言葉だと思う。目の前の、スケッチブックに描いている花のように。 そう思うと、八重子は悲しくなってきた。だが、続いた美優の声に悲しみが止まる。 「地は、本来備わっているもの。味は、趣きという意味でも使われる。――つまり、地味ってことは、本来備わっている趣きって事だね」  うんうんと首を動かす美優が、とびっきりの笑顔を八重子に向けた。 「八重ちゃんは、あの花みたいに清楚で可愛らしいって事だ」  八重子は自分の頬が熱くなるのを感じた。 「えっと、あの」  八重子が真っ赤な顔でうろたえると、美優の目元が優しくとろけた。 「八重ちゃんは、八重ちゃんのまんま、ごてごて飾りつけたり、うそをついたりしないでいられる。それって、すごいよね」
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