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第11話

「それじゃ先輩。失礼しまーっす」  軽い調子で義英に言う美優の姿に、八重子は助けられたのだと理解し、胸を撫で下ろした。 「何あれ。信じらんない!」  プリプリと怒る美優を見ながら、八重子は一人じゃなくてよかったと、心底感謝した。美優が助けてくれなければ、義英に気圧されたまま、居心地の悪い思いをし続けていただろう。 「ありがと」 「お礼なんていいよ。なんて奴」  フンッと美優が荒く鼻息を吹き出し、八重子は自分の不甲斐なさに、そっと自嘲を浮かべた。それを見て足を止めた美優が、心配そうに八重子の顔を覗きこむ。 「入るの?」 「え」 「サークル」  真っ直ぐな美優の目から、逃れるように八重子は視線をずらした。 「美術サークルって言っても、聞けば写生会とは名ばかりの、キャンプとかを楽しむ集まりみたいじゃない? まあ、どこのサークルも似たようなモンだろうけど」  呆れたような美優の声を聞きながら、八重子は曖昧に頷いた。意識の端に、礼司の姿が浮かんでいる。それを邪魔するように、義英の姿も現れた。 「まだ、わかんない」  揺れる心をそのまま口にすれば、そうだよねと美優が呟く。 「新入生を勧誘するために、こまめにビラを配って集まるって言ってたし。何回か顔を出して、決めればいいんじゃない」 「えっ」  そんな話をしていたっけと八重子が驚けば、何人かとメッセージアプリで繋がったんだと、こともなげに美優が答える。 「だから、連絡もらえるよ」 「美優ちゃん、すごい」 「んふふ。まあね」
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