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第10話

 不器用に八重子が頭を下げれば、義英は柔和に口の端を持ち上げながら、鋭く目を細めた。 「礼司に興味があるの?」 「えっ」 「見てただろ。礼司の事」  何と答えるべきかわからず八重子が動揺している間に、義英は次の言葉を発する。 「まあ、仕方無いよな。礼司は男前だし。ビラ配りを礼司に任せたのだって、女子ウケを狙っての事だったから」 「……はぁ」  八重子の気の無い返事を気にするふうもなく、義英は喋り続ける。 「実際、今日の歓迎コンパ、女子率高いし」  ふふっと鼻から軽やかな息を漏らす義英に、八重子はいぶかりながら聞いてみた。 「あの。美術サークルなんですよね」 「うん? そうだけど」 「どうして女子ウケとか……」  語尾を消した八重子に、義英はさわやかとも言っていいほどの笑みで答えた。 「そんなの、女の子が多いほうが楽しいからに決まってるだろ」  絶句する八重子の背を、そう硬くなるなよと義英が親しげに叩く。 「真面目だなぁ。八重子ちゃんだっけ? なんか、純朴でいいな。化粧もほとんどしてないし、爪もそのまま」  笑みを深めて、義英が八重子に顔を近付けた。 「香水もつけてないだろ。いいなぁ、まっさらなの」 「あ、あの」  顔の近さに、八重子は肩をすぼめて体を引いた。 「そんなに警戒しなくていいって。取って食おうってんじゃないんだから。仲良くしようって言っているだけで」 「八重ちゃん」  呼ばれ、八重子は振り向いた。 「会長に挨拶に行こ」  ぐいと美優に腕を引かれるままに、八重子は腰を上げる。
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