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第1話

 本当に綺麗。  八重子は目の前の肢体に、羨望のため息を吐いた。凹凸の少ない滑らかな肌は、年端も行かぬ少女を模したアンティークドールのようだ。 「本当に、いいの?」  美優の問いに、八重子が頷く。不安そうな美優に本気を示すため、ためらいがちに八重子も下着姿となった。 「八重ちゃん」  女性にしては少しハスキーな声。聞き慣れているはずなのに、別人の声に聞こえるのは何故だろう。 八重子は眠りのふちにいるような心地で、美優を見続ける。 「緊張してる?」  労わるように、美優が八重子の頬に触れた。大きな、節のしっかりとした手のひらを感じても、八重子はまだ信じられなかった。 「美優ちゃんが、天使みたいだから」  思ったままを口にすれば、美優がきょとんとして八重子を見下ろす。 「本当だよ。本の中で見た天使みたいに綺麗で、だから……その」 「見惚れてくれたんだ」  美優が小首を傾げれば、細く長い髪がさらりと流れた。白く滑らかな肌と、栗色の髪。大きな瞳に通った鼻筋。うっすらと開いた薄い唇。細く長い首はうらやましいほどで、鎖骨から下は――滑らかな曲線があるはずなのに、子どもの胸のように平らだ。  八重子は不思議な面持ちで、美優の胸に手を伸ばす。触れてもいいのか指を迷わせれば、美優が「触って」と八重子の耳元でささやいた。美優の胸乳に触れた指は、想像どおりの感触を受け止める。八重子は夢を見ているような心地で、美優の胸に指を滑らせた。  明らかに、女性の胸とは違っていた。 「本当に、男の人なんだ」  八重子のしみじみとした呟きに、美優が恥ずかしそうに首肯した。 「信じられない」  八重子がゆるく頭を振ると、美優の唇が八重子の頬に押し当てられる。 「すぐに、思い知る事になるよ」
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