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4.あこがれの王子様を、現実の男に

 布団の中で枕を抱きしめ、頼子は「どうしよう」を頭の中でグルグルさせていた。 (がんばりますって言っちゃったけど、どうがんばったらいいんだろ)  さっぱり妙案が浮かばない。 (恋は下心……下心)  くりかえす頼子は、勝負下着を通販で購入して、それを手に入れてから突撃しようかと考える。 (でも、その間にだれかが弘毅さんにお見合い話を持ってきたら?)  相手はきっと、弘毅を気に入る。気に入らないはずがない。こんな田舎に住んでいても、弘毅は垢ぬけていてハンサムで、王子様らしさは損なわれていないのだから。 (よし!)  当たって砕けろだと、布団を跳ね上げた頼子は弘毅の部屋に突撃する決心を固めた。 (迫るにしたって、おばさんが眠っている時間がいいし)  砕けたくはないけれど、当たらなければ進展しない。気持ちを奮い立たせて、そろりそろりと弘毅の部屋を目指した。襖の前に立ち、ノックをするかしないか悩み、眠っているかもしれないから、このまま開けてしまおうと引き手に指をかけた。ゴクリとツバを呑み込んで、えいやっと勢いよく襖を開く。 「こ、弘毅さんッ!」 「っ?!」  沈黙が訪れる。頼子と弘毅は互いに目を見張って硬直した。 「……え」 「……え」  異口同音に、おどろきがこぼれる。先に立ち直ったのは弘毅だった。机に上げていた足を下ろし、片手でズボンを直しながら、もう片手でマウスを動かしパソコンの画面を操作する。ヘッドフォンをしていたので音声はわからないが、どんなものを観ていたのかは想像できた。 (オナニー、見ちゃった)  一瞬だけだが弘毅のナニを見てしまった。強すぎる衝撃に金縛りにあってしまった頼子は、バツの悪そうな弘毅の咳払いで我に返った。 「あ、あの、えっと」  うろたえる頼子の目に、キラキラした目の美少女イラストのポスターが飛び込んでくる。 (ここは出直すところ? ううん。これはきっと、チャンスだわ)  負けるものかと美少女イラストをにらみつけ、腹の下に力を入れて一歩踏み出す。 「弘毅さん」  緊張のあまり声が裏返ってしまった。それでも後には引くものかと気合を入れて、襖を閉める。 「なにを、観ていたんですか」 「な、なにって……頼子ちゃんが観ても、おもしろくもなんともないものだよ」  出て行けと拒絶されなかった。わずかに硬さをほぐした頼子は弘毅に近づき、パソコンを見た。背景画面に設定されている、水着姿の赤毛の美少女が笑いかけてくる。 (二次元の、アニメのエッチなビデオを観ていたの?)  やはり弘毅は二次元にしか興味がないのか。  ひんやりとしたものが頼子の胸に広がっていく。 (弱気になっちゃダメよ。迫るって決めたんだし。おばさんだって、弘毅さんに現実の女がいいって思ってほしがっているから大丈夫)  おばさんと昌代さんが味方でいてくれる。ひとりじゃないとこぶしを握って、頼子は無理に笑顔を作った。 「弘毅さんも、男の人だったんですね」 「えっ」 「その……そういうものに、興味がないんじゃないかって思っていました」 「そういうものって」  赤くなった弘毅を、かわいいと感じる。あこがれとは違った、いとおしさを覚えた頼子は見えないなにかに背中を押されて膝をつき、弘毅の足元にひざまずいた。 「頼子ちゃん?」 「途中でしたよね」 「いや、その」 「私が、処理してあげます」  ギョッとした弘毅の太腿に手を乗せて、頼子はズボンのファスナーを下ろして指を入れた。 「ちょ……ッ」 「自分でするより、きっと気持ちがいいはずです」  ためらうことなく取り出した頼子は、両手でそれを包んで撫でた。弘毅の短いうめきにゾクゾクと背筋を震わせ、クビレを指先で擦る。 (これが、弘毅さんの)  ドキドキと心臓が波打っている。 「っ、頼子ちゃん」  肩を掴まれ引きはがされそうになった頼子は、とっさに強く手の中のものを握った。 「ううっ」  過敏な場所への刺激に、弘毅の力が抜ける。 (急所は私が握っているんだ。だから、このまま)  追い出される前に、弘毅を気持ちよくしたい。  その一心で、頼子は手を動かした。手淫など、したことがない。どうすれば気持ちよくさせられるのか知らない頼子は、ただただ手を動かして、クビレから根元までを擦り続けた。 「っ、は……ぅ」  抑えた弘毅の息が色っぽくて、頼子の体が熱くなる。手の中で硬く熱くそびえ立っているものが、愛らしくなってきた。それと同時に、ぷっくりと先端に液が浮かぶ。親指でそれをつつくと、弘毅の嬌声がさらに艶めいた。先っぽの切れ込みをなぞると、弘毅の太腿に力がこもって盛り上がる。 (ここが、気持ちいいんだ)  それならとはりきった頼子は、にじむ液を塗り広げながら先端を親指の腹で刺激し、クビレを擦った。 「は、ぁ……っ、頼子ちゃん、もう」  やめてくれと息で願われ、頼子の胸の先がうずいた。催眠にかかったように、頼子は無心に弘毅の熱を愛撫する。 (これ、どんな味がするんだろう)  ぼんやりと浮かんだ考えに唇が引き寄せられて、頼子は弘毅の液を舐めた。 「っ、は」  息を呑んだ弘毅のこわばりを意識しながら、頼子は先端を口に含み、チュウチュウと吸ってみる。こぼれ落ちる弘毅の熱っぽい息が、頼子の髪に絡まった。それが頼子の頭を動かし、そろそろと口に入る限界まで弘毅の陰茎を含ませる。 「頼子ちゃん……っ」  舌で上あごに押しつけて頭を動かす。ビクビクと脈打つ先端からあふれる液は量を増し、頼子の唾液と混ざって口の端からこぼれそうになる。それを吸い上げると、弘毅の喉から甘やかなうめきが漏れた。 (感じてくれているんだ)  それがうれしくて、頼子は興奮した。脚の間がムズムズしはじめ、口の中が気持ちよくなってくる。うっとりしながら口淫する頼子は、震える弘毅を逃すまいと根元をしっかり両手で支えた。 「んっ、ふ……う、んうっ、う」  口の中から液があふれて、飲みきれなくなった頼子は息を乱してうめきつつ、それでも行為を続けた。  弘毅の熱で口内が擦れるのが気持ちいい。頼子は大胆に頭を動かし、モゾモゾと腰を揺らした。胸の先や女の谷が、ほんのりと甘美な痺れをまとっている。弘毅を気持ちよくさせたいのか、自分が気持ちよくなりたいのか。そんな考えすらも忘れて、頼子はただ行為に没頭した。  口からあふれた液は弘毅の熱を濡らし、頼子の指を伝ってズボンを湿らせる。頼子の意識はぼんやりとして、行為の意味も忘れかけたころに、それは訪れた。 「くっ」  鋭く短い声が耳を打つと同時に、口の中の熱がはじける。喉に吹きつけられた液におどろいた頼子は顔を上げ、一瞬止まった息にむせた。 「ぐっ……げほっ、げほ……うっ、ふ」  口の中が妙な味でいっぱいになっている。 (なにこれ)  思ってすぐに、弘毅のアレだと気がついて体中が羞恥と興奮で熱くなった。 (私の口の中で、弘毅さんが出しちゃったんだ)  自覚した頼子は目の前でしんなりしている弘毅をながめた。先ほどまでは元気に立ち上がっていたのに、いまはフニャリとしている。けれどわずかに芯があるのか、完全に垂れてはいない。 (こんなに間近で男の人のものを見るなんて、はじめてだ)  好奇心に羞恥を忘れた頼子は、まじまじと目の前のものを観察した。 「あの、頼子ちゃん」  遠慮がちな、うろたえた声で呼ばれて顔を上げる。両手で顔をおおって天井を向いている、弘毅の耳が赤い。  しばらく待ってみたが、続きはなかった。視線を戻した頼子は、手のひらに弘毅の陰茎を乗せてみる。 (さっきより、やわらかい)  不思議だ。どういう原理で、あれほど熱く硬くなるのだろう。 「もう、やめてくれないか」  遠慮がちな声にふたたび顔を上げた頼子は、指の隙間からのぞいている弘毅の目と視線がぶつかった。 「あ……その……ええと、こ、弘毅さん」 (なんて言えばいいんだろう。気持ちよかったですか? じゃ、なんだかすごく慣れた女みたいかな。はじめてだったから自信がなくてっていうのも変だし) 「お願いだから、離れて」  硬い声音に、頼子は下唇を噛んだ。 (迫るって、やっぱりむずかしいですよ。昌代さん、どうすればいいの)  これで終わったら勇気を出した意味がなくなりそうで、頼子は次の行動を求めた。  弘毅の肩越しにポスターの美少女イラストが笑っている。あなたではこの程度が精一杯でしょうと言われている気がして、腹が立った。 (なによ! あなたはそこから出られないくせに)  こんなこと、弘毅にしてあげられないくせにと、ムカついた勢いで立ち上がった頼子は、ぐいっと腕で口を拭うと胸に手を当てて宣言した。 「私、弘毅さんの役に立つことに決めました!」 「え?」  キョトンとする弘毅の前で、寝間着を脱ぐ。ブラジャーはしていなかったので、すぐに生身の乳房が弘毅の視線に触れた。 「よっ、頼子ちゃん」 「これが、生身の女の胸です! スタイルいいわけじゃないし、胸もおおきくないけど、平均くらいはありますから」 「ふっ、服を着て」 「だから私、弘毅さんのモデルになります」 「なにを言っているんだ」 「本物の女の裸を知らないから、あんな現実離れしたおっぱいを描くんですよ。だから、私で女の体の勉強をしてくださいっ!」 「ちょっと、落ち着こう」 「落ち着いていますし、真剣です。さあ、触って、確かめてください。デッサンとか、そういうことをするんですよね? 私じゃモデルにふさわしくないかもしれないですけど、どんなポーズだって取りますし」 「頼子ちゃんっ!」  立ち上がった弘毅にガッシと肩を掴まれて、クルリと反転させられる。そのまま押されて部屋の外に出された。 (えっ)  暗い廊下の先から視線を外し、振り向いて弘毅を見れば脱ぎ捨てた寝間着を押しつけられる。 「おやすみ」  低く抑えたあいさつとともに、ピシャリと襖が閉じられる。暗い廊下にポツンと残された頼子の足元から、ジワジワと追い出された実感が這い上ってきた。 (私……失敗したのかな)  思い切って迫って、当たってみたはいいけれど見事に砕けてしまったんだ。  熱っぽかった肌が急速に冷えて、頼子はその場に膝をついた。 (弘毅さんに、嫌われた?)  もう二度と、声をかけてもらえないどころか、目も合わせてくれなくなるんじゃないか。そう思った頼子の目じりから、ポロリポロリと涙がこぼれる。 「っ、ふ……う……ぅう」  握りしめた寝間着の上着を顔に押しつけ、涙を吸わせる。 「ううっ、ふぇ……うぇえ……ふぇええ」  我ながら子どもっぽい泣き方だとあきれるが、そうなのだからしかたない。ふえっふえっと襖の前でしゃくり上げる頼子は、のろのろと立ち上がって襖に背を向け、自分の部屋へ戻った。 「ふぇえ……ううーっ」  泣きながら寝間着を着なおし、モソモソと布団に潜り込む。頭から掛け布団をかぶってまるまって、幼稚な泣き声を上げた。 「うえぇえ……っ、ふ、ぁあーん」  グズグズと鼻を鳴らす頼子の口の中には、弘毅の味がまだ残っていた。
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