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第1話

 お昼ご飯は駅前のカフェにしよう。そう思い立って福永圭一(ふくながけいいち)は学び舎である大学の門を抜け出した。料理を一切せず、入学してからの昼食に校内の学食、出張カフェ、コンビニ、全てのメニューをほとんど制覇し飽きてしまった。  最近、ゼミの仲間たちの間で噂される駅前のカフェは先週オープンしたばかりらしく、コスパがいい軽食メニューと種類豊富なスイーツが人気だと聞いた。  デザートまでしっかり食べても午後の講義に間に合うだろうと、圭一はオシャレなドアを開いた。 「いらっしゃいませー!」  風鈴の様な癒し効果を感じるベルの音が響き、店の制服を崩さす着こなす店員が振り返った。 「おひとり様ですかー?」 「あ、はい」 「ただいま混んでおりまして……相席でもよろしいでしょうかー?」 「大丈夫です」 「ありがとうございますー。ではこちらへどうぞー」  1名様ですー、と店員は声をあげて圭一を窓際のテーブルに案内した。先に席にいた女性客がパスタを食べていた。そこへ水の入ったコップとメニューを置き、決まりましたらお呼びください、と離れていった。 「相席すみませ――って、相川?」 「あら福永くん。お先」  相席相手は同じゼミの相川飴子(あいかわあめこ)だった。彼女の前にあるお皿は、名前からは想像つかないレベルの真っ赤なパスタ。 「お前ってほんと辛いの好きだよな。それ、タバスコどれだけ入れたんだよ」 「失礼ね。これ、ほとんど新品だったしまだ半分も入れてないわ」 「ってことは、ほぼ新品だったこのボトルで少なくとも1/3は入れたんだな」  澄ました顔で真っ赤な麺をフォークに巻いていく飴子に、圭一はメニューを開いてため息をついた。ちょうど通りがかった先ほどの店員に手を上げる。 「野菜のドリアとコーンスープのセット、食後にカスタードプリン生クリーム増量でカフェオレと一緒に下さい」 「生クリーム増量は追加料金頂きますがよろしいでしょうかー?」 「大丈夫です」 「かしこまりましたー」  今どき少なくなった手書きのオーダー用紙に注文内容を書き込んで、店員はメニューを受け取った。 「あんたこそ、甘ったるいのばっかりね」 「チョコパンケーキとベリーパフェと生クリーム入りココアと迷ったけどやめただけマシだろ。お前は名前改名した方がいいんじゃないか」 「その横文字聞くだけで砂吐きそう。名前は親に言ってちょうだい。あたしも甘ったるくて嫌だわ」  飴子の家は先祖代々続く飴細工専門店だ。娘にも飴を好きになって欲しかったのか、はたまた継いで欲しかったのか、名前にも使われてしまったため飴子としては迷惑だった。 「しかし飴屋の娘が甘味嫌いなんて、商売にならないな」 「継ぐ気もないのよね……ほんと迷惑」 「ふーん、そーゆーもん?」 「そういうものよ」
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