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Act.4-01
待ち合わせ場所だった駅からタクシーに乗り込み、私達は椎名課長のアパートへと向かった。
着くまでの間、私達の間に会話はなかった。
代わりに手を繋ぎ、互いの温もりを確かめ合う。
着いてからはどちらからともなく手を離し、私が椎名課長を追うように歩く。
椎名課長の住まいは二階の一番奥の角にあった。
鍵を回し、ドアを開けると、真っ暗な室内が目に飛び込む。
「上がって」
促されるままに靴を脱ぐ。
入ってすぐ左側にドアがあり、そこを開けるとリビング兼キッチンがあった。
広さは多分、十畳ぐらいだろうか。
椎名課長はすぐに電気を点け、今度は適当に座るように私に言ってきた。
リビングスペースにはソファが置いてある。
でも、さすがにいきなりそこに座るのは礼儀に反している気がしたから、床に直接正座した。
その間、椎名課長は小さなキッチンで戸棚を開けたり冷凍庫を開けたりを繰り返していた。
どうやら、本当にブランデー入りのアフォガードを作ってくれるらしい。
私は一度座ったけれど、何もしないのも気が引けたからキッチンに向かった。
「なんか手伝います」
「いいから座ってろ。藤森は何もしなくていい」
「でも……」
「いいから。命令だ」
結局、手伝いを拒まれてしまった。
私は悪いと思いつつ、けれども、『命令だ』と言われてしまえば下手に手出しも出来ない。
私がリビングに戻ると、それからしばらくして、椎名課長がアイスクリームとコーヒー入りのマグカップを持ってきてくれた。
マグカップに鼻を近付けてみると、コーヒーに混ざってほんのりとお酒の匂いがした。
「こっち座れ」
ソファに腰を下ろした椎名課長が、空いている隣を何度も叩く。
「いや、こっちでいいです」
頑として動かない私の腕を、椎名課長は半ば強引に引いてきた。
もう、なすがままになるしかなかった。
ふたりで並んで座ると、また距離感が縮まったような気がする。
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