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Act.3-03

「どうする?」  無言を貫いたままの私に、椎名課長はやんわりと、けれども少し焦った様子で催促してくる。 「迷惑なら迷惑だとはっきり言ってくれないか? 今までだって、藤森は無理に俺に付き合ってくれた。俺はこれ以上、藤森に迷惑はかけたくない。――俺は、藤森が幸せになれることを最優先したい……」  再び、私は顔を上げた。  口元は笑みを浮かべているけれど、今にも泣き出しそうな表情だった。  仕事の時は自信に満ち溢れていて誰からも頼られる存在なのに、こんな哀しい顔もするんだ、と胸の奥が酷く痛み出す。  私は躊躇いながら、私に重ねられた椎名課長の手の上からさらに私のそれを載せた。  椎名課長は瞠目したまま、重なり合った手を凝視している。 「藤森……、あまり俺を期待させるような真似は……」 「期待させているんです」  あからさまに動揺している椎名課長を前に、私は自分でも驚くほど堂々と振る舞っていた。 「私、椎名課長と無理に付き合っていたなんてことは一度もないです。ましてや、迷惑だなんてちっとも思ってませんよ? でも、今まで椎名課長に甘えていたのも事実です。だから、今日こそはっきりさせないと、ですよね……?」  私は小さく深呼吸し、おもむろに続けた。 「――私の幸せは、椎名課長とずっと一緒にいることです」  私にとっての一世一代の告白だった。  口にしたとたん、全身が一気に熱を帯び始めた。  椎名課長は相変わらず私を見つめたまま、黙っていた。  驚き過ぎて声が出なくなっているのか。 「――冗談、ではないんだよな……?」  恐る恐る確認してくる椎名課長に、私はゆっくりと頷いて見せた。 「俺、冗談は通じない方なんだが……」 「私だって、こんな冗談口が裂けたって言いませんよ……」 「本気、ってことでいいんだな?」 「本気です」 「本気の本気で?」 「本気の本気です」  しつこい、とは突っ込めなかった。  うやむやにし続けていたのは私なのだから、必死になっている椎名課長を責めることは出来ない。 「ブランデー入りのアフォガード、食べたいです」  遠回しな言い方だったけれど、椎名課長には伝わったらしい。 「来るか?」  椎名課長からの再びの誘いに、私はコクリと首を動かした。
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