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Act.3-02

「――本気、ですか……?」  おずおずと訊ねると、椎名課長が首を縦に動かした。 「もう、いい加減お試し期間は終わりにしないか?」  改めて言われ、私の胸の鼓動がさらに高鳴る。  椎名課長の言うことももっともだと思う。  好意に甘え、私は現状のままで満足していたけれど、椎名課長は決してそんなことはなかった。  私は、改めて椎名課長に想いを伝えたことがない。  いや、伝える自信がなかった。  夜のデートに誘われたことで何かしら起こるであろうことは予想していたものの、いざとなると困惑してしまう。  もし、私がこの場で拒絶すればどうなるか。  でも、椎名課長のことだから、無理強いは絶対にしない。  だからこそ、ここではっきりさせないと、またズルズルと中途半端な状態が続いてしまう。  テーブルに置かれたままの私の左手に、椎名課長の右手が重ねられる。  手を繋ぐこともしなかった椎名課長が、初めて私に触れてきた。 「――課長は」  ようやくの思いで口を開いた。 「私とこれからどうしたいと、思ってますか……?」  自分でも何を訊きたいのか分からなかった。  けれど、今、椎名課長がどんな想いを抱いているのか知りたい。 「藤森と、ずっと一緒にいたい」  決定打とも言える台詞だった。  私も異性と交際した経験はあるから、椎名課長の言葉の意図はすぐに察した。  私は右手に握ったままだったスプーンをお皿に置き、椎名課長からアフォガードに視線を落とす。  まだ、三分の一ほど残っていたけれど、それもほぼ溶けてしまい、ミルクがたっぷり入ったカフェオレの色に変化していた。  椎名課長の前のアフォガードも同様だった。  さっきまではあれほど嬉しそうに噛み締めながら食べていたのに、今はその存在すら忘れているのでは、と思えた。
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