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Act.3-01
宣言通り、椎名課長が料理をほぼ全部平らげた。
ただ、やっぱり無理をしたようで、ちょっと苦しそうに見えた。
「大丈夫ですか……?」
恐る恐る訊ねる私に、椎名課長は、「大丈夫」と強がる。
「デザートは別腹だ。まだ食える余裕はある」
まるで女子の発言だ。
そんな私こそ女子なのだけど。
空になった料理の食器が全て片付けられてから、入れ替わりにアフォガードが運ばれてきた。
「ごゆっくりどうぞ」
それぞれの前にアフォガードの食器と小さなコーヒーのポットを置いてから、従業員はゆっくりと席から離れる。
「さて、最後の楽しみだ」
椎名課長は料理が運ばれてきた時以上に嬉しそうにしている。
熱いコーヒーを冷たいバニラアイスにかけ、ほど良く溶けたところでスプーンを掬う。
「熱いのか冷たいのかよく分からんのがいいな」
本当に幸せそうに噛み締めている。
「おい、さっさと食わないと溶けてなくなっちまうぞ?」
椎名課長に指摘され、私も半ば慌てて椎名課長がやっていたようにしてみる。
椎名課長の言う通り、冷たいアイスが熱いコーヒーに溶かされ、不思議な感じだった。
また、コーヒーが無糖だから、アイスと混ざってほど良い甘さとなる。
「これさ」
食べるのに夢中になっていたはずの椎名課長が口を開いた。
「ブランデーを一緒にかけても最高なんだよ。実はたまにウチでやってる」
「へえ」
「食ってみたくない?」
「食べてみたいですね。ブランデー入りも美味しそう」
「なら、これからウチに来る?」
サラリと誘われ、私の手は宙に浮いたまま止まった。
「えっと、なんの冗談ですか?」
からかわれているのでは、と思った私は、内心動揺しつつも冷静を装いながら訊ねる。
少しでも表情の変化を見逃すまいと椎名課長をジッと睨む。
けれど、椎名課長はニコリともせず、私に真っ直ぐな視線を注いでくる。
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