4 / 11

Act.3-01

 宣言通り、椎名課長が料理をほぼ全部平らげた。  ただ、やっぱり無理をしたようで、ちょっと苦しそうに見えた。 「大丈夫ですか……?」  恐る恐る訊ねる私に、椎名課長は、「大丈夫」と強がる。 「デザートは別腹だ。まだ食える余裕はある」  まるで女子の発言だ。  そんな私こそ女子なのだけど。  空になった料理の食器が全て片付けられてから、入れ替わりにアフォガードが運ばれてきた。 「ごゆっくりどうぞ」  それぞれの前にアフォガードの食器と小さなコーヒーのポットを置いてから、従業員はゆっくりと席から離れる。 「さて、最後の楽しみだ」  椎名課長は料理が運ばれてきた時以上に嬉しそうにしている。  熱いコーヒーを冷たいバニラアイスにかけ、ほど良く溶けたところでスプーンを掬う。 「熱いのか冷たいのかよく分からんのがいいな」  本当に幸せそうに噛み締めている。 「おい、さっさと食わないと溶けてなくなっちまうぞ?」  椎名課長に指摘され、私も半ば慌てて椎名課長がやっていたようにしてみる。  椎名課長の言う通り、冷たいアイスが熱いコーヒーに溶かされ、不思議な感じだった。  また、コーヒーが無糖だから、アイスと混ざってほど良い甘さとなる。 「これさ」  食べるのに夢中になっていたはずの椎名課長が口を開いた。 「ブランデーを一緒にかけても最高なんだよ。実はたまにウチでやってる」 「へえ」 「食ってみたくない?」 「食べてみたいですね。ブランデー入りも美味しそう」 「なら、これからウチに来る?」  サラリと誘われ、私の手は宙に浮いたまま止まった。 「えっと、なんの冗談ですか?」  からかわれているのでは、と思った私は、内心動揺しつつも冷静を装いながら訊ねる。  少しでも表情の変化を見逃すまいと椎名課長をジッと睨む。  けれど、椎名課長はニコリともせず、私に真っ直ぐな視線を注いでくる。
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!